東京大学大学院 医学系研究科 衛生学教室の助教である河村さまにインタビューをしました。
河村さまが所属する研究グループでは、AIによるがん病理組織画像の特徴の数値化に成功し、その技術を用いて病理診断を補助するシステム「Luigi(ルイージ)」を開発されました。
今回、河村さまの研究グループが実施された「Luigi」を活用した病理診断の実証実験に、WisdomBaseをご利用いただきました。
「Luigi」は病理診断を補助するAIシステムです。病理診断とは、病理医という専門の医師が、病気の疑いのある組織を顕微鏡で観察し診断することです。
腫瘍の種類は現在1,000種類以上存在するとされています。腫瘍の見た目はひとつひとつ違いますが、病理診断医はこれまでの知識や経験から腫瘍の種類を判別します。
一方で、非常に稀な腫瘍や、専門分野以外の腫瘍に出会うこともあります。そういった場合は、アトラスという病理診断用の症例がまとめられた写真集のような書籍を使って対応しています。
ただアトラスにはひとつの腫瘍に対し、1種類程度の事例しか掲載されておらず、また該当する腫瘍を探す手間も課題でした。
このような背景から、病理診断を補助する「Luigi」を開発しました。「Luigi」に病理診断が必要な組織の画像をアップロードすると、データベースの中から類似した組織の画像が表示されます。病理医は表示された画像を確認して診断を絞り込みます。
「Luigi」の活用の有無により、診断までのスピードや精度にどれくらい差があるのかを実験しました。WisdomBaseの試験機能を活用して、実験で使用する問題の作成や、実験協力者の解答までの時間計測を行いました。
会場に集まって実験を行うことが実験協力者の都合上困難でしたので、オンラインで解答できることと、問題の解答時間を計測できることが条件でした。
何社か比較検討しましたが、いずれの会社も1からシステムを開発しなければならないとのことで、コストと納期が課題でした。1から開発すると高額になりますし、実験を行う時期が遅くなってしまうことが懸念点でした。
そのような時に、システムの発注先を探せるマッチングサービスを利用したところ、シェアウィズさんから連絡をいただきました。
WisdomBaseは、実験で必要な機能がすべて揃っており、予算内の費用でしたので導入を決めました。また実験をできる限り早く開始したかったので、すぐにシステムを利用できた点も良かったです。
実験協力者の都合に合わせて、いつでも・どこでも解答できた点です。今回の実験は、さまざまな国籍や専門分野、経験年数の病理医に協力を依頼しました。病理医の先生方は非常に忙しいため、空いた時間に実験の協力を依頼しました。WisdomBaseを使用したことで、時間と場所を問わず解答できた点や、解答時間の計測が自動だった点がよかったです。
またちょっとしたトラブルもすぐに対応いただけましたし、実験への支障はありませんでした。おそらくWisdomBaseがなければ実験ができなかったので、導入して本当に良かったです。
プール問題からそれぞれの実験協力者に対して、どの問題をどのような順番で提示するのかカスタマイズができればよいなと思いました。統計的な比較をするために、「Luigi」を使うグループと使わないグループに対して、それぞれ実験協力者毎にランダムに問題を割り当てる必要がありましたので、カスタマイズができれば設定が楽になると思いました。
ただ私たちの利用目的がかなり特殊なので、あまりこのような要望はないかもしれませんね。
まだ結果を集計しているところですが、「Luigi」の有効性が確認されています。一方でシステムに使い慣れていないために想定よりも診断にかかる時間が長くなるなどの課題も明らかになりました。他にも今回の実験で明らかになった点もありますので、改善ができましたらまた実験を行いたいと考えています。その際は、またWisdomBaseを利用させていただきたいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。