
はじめに
「eラーニングを導入すれば、教育コストも時間も削減できる」——。
そんな期待を胸に、対面研修のeラーニング化を進めている教育担当者やマネージャーの皆さん。しかし、こんな壁にぶつかっていませんか?
「対面で1日(8時間)かけていた研修、単純に8時間の動画に置き換えても、誰も見てくれない…」
「『動画が長すぎる』と現場から不満が続出。受講完了率が上がらない」
eラーニングの導入でつまずく最大の要因の一つ、それが「時間設計」の失敗です。単に動画を作ればよいわけではありません。受講者の集中力を維持し、学習効果を最大化し、同時に業務負担を最小限に抑える。この難題をクリアする「最適な時間」を見つけ出す必要があります。
この記事では、研修の成果を左右するeラーニングの時間設計について、科学的な根拠や他社の実践例を交えながら、その「最適解」を導き出すための実践的なヒントを徹底的に解説します。
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- はじめに
- 効果的なeラーニング動画の長さとは
- 学習効果を最大化する動画の時間設定
- ターゲットオーディエンス別の最適な時間
- eラーニング動画の時間と集中力の関係
- 見落とせない「学習時間」の法的・制度的側面
- まとめ
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効果的なeラーニング動画の長さとは

eラーニングの動画コンテンツを作成する際、担当者が最初に悩むのが「1本あたり何分にするか」という問題です。世の中には「短いほど良い」という風潮もありますが、短すぎても内容が伝わりません。効果的なeラーニング動画の「長さ」については、実はいくつかの有力な「目安」が存在します。
ここでは、一般的なコンセンサスと、なぜその長さが支持されるのか、その背景にある考え方を探っていきます。
eラーニング動画の一般的な長さ
eラーニングの世界では、学習内容を小さな単位(モジュール)に分割して提供する「マイクロラーニング」という手法が主流となっています。これは、受講者がスマートフォンなどを使い、業務の合間や移動中といった「スキマ時間」で学習することを前提とした考え方です。
このマイクロラーニングの考え方に基づくと、1本の動画の長さは「5分から15分程度」が現在の主流な目安と言えるでしょう。
- 「5分〜10分」を推奨する見解
- 比較的短めの時間を推奨する背景には、受講者の集中力の維持(詳細は後述)と、学習の心理的ハードルの低減があります。
- 「5分だけなら見よう」という手軽さが、受講率の向上に直結します。
- 特にコンプライアンスの周知や、新しい社内ツールの使い方など、単一のトピックを簡潔に伝える場合に有効です。
- 「15分前後」を推奨する見解
- 一方で、ある程度まとまった知識やスキルを体系的に伝える場合、5分では短すぎることがあります。
- 学習内容の「キリの良さ」や「理解の深さ」を担保する現実的なラインとして、「15分前後」を一つの区切りとする見解も有力です。
- これは、学校の授業(50分)やテレビ番組(30分~60分)に比べ、オンライン学習における集中力の限界点を考慮した現実的な落としどころと言えます。
重要なのは、例えば「1時間の研修」をそのまま1時間の動画にするのではなく、「15分の動画×4本」のように、学習テーマや章ごとに分割して構成する視点です。これにより、受講者は自分のペースで学習を進められ、一度にすべての内容を視聴する必要がなくなります。
学習効果を最大化する動画の時間設定

動画の「長さ」だけを議論しても、学習効果は最大化できません。大切なのは、その時間で「何を」「どのように」学んでもらうかという「時間配分」の設計です。単に知識をインプットするだけの内容なのか、それとも具体的なスキルを習得してほしいのか。研修の「目的」によって、最適な時間の使い方はまったく異なります。
ここでは、学習内容の特性に応じた効果的な時間配分について深掘りします。
学習内容に適した動画の時間配分
研修内容は、大きく「知識習得」「スキル習得」「マインドセット変革」の3つに分類できます。それぞれに適した時間配分を見ていきましょう。
- 知識習得型(例:コンプライアンス、製品知識、業界動向)
- 特徴
- 覚えるべき情報が中心。
- 時間設計
- マイクロラーニング(5分〜10分)が最も効果的です。
- 「情報漏洩の危険性」「新製品の3つの特徴」など、トピックを細かく分割します。
- 理由
- 短い時間でインプットを繰り返す(反復学習)ことで、記憶の定着が促進されます。
- また、就業規則や法律の変更など、必要な知識がアップデートされた際も、該当する動画だけを差し替えればよいため、運用コストを低く抑えられます。
- 特徴
- スキル習得型(例:営業ロープレ、ソフトウェア操作、部下指導)
- 特徴
- 「知っている」だけでなく「できる」ようになる必要がある。
- 時間設計
- 1チャプターあたり15分〜20分程度。
- 理由
- 単なる知識のインプットに加え、「良い例・悪い例」のデモンストレーション、操作手順の具体的な解説など、視覚的に「型」を示す時間が必要です。
- 動画以外の時間配分
- スキル習得では、動画視聴後の「実践」が不可欠です。
- 動画(15分)+確認クイズ(5分)+ロールプレイング演習やレポート提出(30分)のように、「インプット時間」と「アウトプット時間」をセットで設計することが成功の鍵となります。
- 「1時間のeラーニングコース」とは、動画の総時間ではなく、これらすべての学習活動を含めた合計時間で見積もるべきです。
- 特徴
- マインドセット変革型(例:リーダーシップ、ダイバーシティ、企業理念浸透)
- 特徴
- 受講者の価値観や意識に変革を促す。
- 時間設計
- 1チャプターあたり20分〜30分程度。
- 理由
- このタイプの研修は、効率性や短さだけを追求すると「お説教」のように聞こえてしまい、受講者の心に響きません。
- なぜそれが必要なのか(Why)を深く理解してもらうため、経営者のメッセージ、当事者のインタビュー、具体的なケーススタディを用いたドラマ仕立てのコンテンツなど、感情に訴えかけるストーリーテリングが必要になります。
- そのため、他のタイプよりもある程度まとまった時間が必要となる場合があります。
- 特徴
このように、「何分がベストか」という問いの答えは、研修の目的によって変わるのです。
ターゲットオーディエンス別の最適な時間

研修の「内容」だけでなく、「誰が」受講するのかというターゲットオーディエンスの特性も、時間設計における重要な変数です。
特に、幼い頃からスマートフォンや動画プラットフォームに親しんできたデジタルネイティブ世代と、体系的な学習スタイルに慣れ親しんだ中堅・ベテラン層では、時間の感じ方や好まれる学習フォーマットが異なります。両者の特性を理解し、アプローチを変える必要があります。
若年層と成人に対するアプローチの違い
1. 若年層(主に20代〜30代前半、デジタルネイティブ世代)
- 特徴
- YouTube、TikTok、Instagramリールなど、短尺動画プラットフォームを日常的に利用。
- 情報収集のスピードが速く、結論を先に求める傾向。
- マルチタスクに慣れており、一つのコンテンツに長時間集中するのが苦手な場合がある。
- 効果的な時間アプローチ
- コンテンツの細分化
- 1本の動画は「3分〜10分」を目安に、より短く区切ることを意識します。
- モバイルファースト
- PCでの受講を前提としつつも、スマートフォンでのスキマ時間学習を想定した構成(テロップを大きくするなど)が有効です。
- インタラクティブ性
- 動画の途中で簡単なクイズを挟む、ゲーミフィケーション(ポイント付与やランキング)要素を取り入れるなど、飽きさせない工夫が求められます。
- コンテンツの細分化
2. 成人(主に30代後半〜ベテラン層)
- 特徴
- 学習の「背景」や「理由(Why)」を重視。体系的な理解を好む。
- 対面研修や書籍など、一定時間集中して学ぶスタイルに慣れている。
- 業務経験が豊富なため、理論と自身の経験を結びつけて理解しようとする。
- 効果的な時間アプローチ
- 体系的な構成
- 1チャプター「15分〜20分」程度でも、内容が論理的に整理され、学ぶ意義が明確であれば受け入れられます。
- 導入の重視
- 動画の冒頭で「この学習があなたの何の役に立つのか」を明確に提示することが、学習動機を高めます。
- 経験との接続
- 単なる知識の羅列ではなく、「あなたが過去に経験したこのケースでは…」といった形で、受講者の実務経験と結びつける問いかけが効果的です。
- 体系的な構成
ただし、世代に関わらず共通しているのは、「忙しい業務の合間に学ぶ」という点です。ベテラン層であっても、不要な前置きが長い動画や、冗長な説明は敬遠されます。どの世代に対しても、「簡潔明瞭であること」はeラーニングの鉄則です。
eラーニング動画の時間と集中力の関係

eラーニングを設計する上で最大の敵は、受講者の「集中力の途切れ」と、それに伴う「離脱」です。どんなに素晴らしい内容の動画でも、最後まで見てもらえなければ意味がありません。人間の集中力には科学的な限界があります。
この限界を理解し、それを逆手に取った時間設計を行うことが、受講完了率を高める鍵となります。
集中力を維持するための時間制限
「人の集中力はどれくらい続くのか」という問いには諸説あります。
- 学習における「15分」の壁
- より学習の文脈に即した研究では、「15分」が一つの重要な区切りとされています。
- また、講義や授業を聞くといった受動的な学習では、15分〜20分程度で注意力が低下しやすいという研究報告もあります。
- ポモドーロ・テクニック(25分)
- 生産性向上のテクニックとして知られる「ポモドーロ・テクニック」は、「25分の作業+5分の休憩」を1サイクルとする時間管理術です。
- これは、人間が深い集中を維持できる現実的な時間として「25分」を設定しています。
これらの知見から、eラーニングの動画設計において言えることは、「15分を超えると集中力は明らかに低下し始め、25分がほぼ限界である」ということです。
もし、どうしても15分を超える動画を作成する必要がある場合は、以下の工夫が不可欠です。
- チャプター分割
- 15分以上の動画は、必ず内容の区切りでチャプターを設け、受講者が休憩を挟んだり、後で見返したりしやすくします。
- インタラクションの挿入
- 10分〜15分に一度、動画を一時停止させ、簡単な「問いかけ」や「確認クイズ」を挿入します。これにより、受動的な視聴から能動的な学習へと頭を切り替えさせ、集中力をリセットさせる効果があります。
- 視覚的変化
- 講師が話し続けるだけでなく、アニメーション、図解、重要なキーワードのテロップなどを効果的に挿入し、視覚的な「飽き」を防ぎます。
見落とせない「学習時間」の法的・制度的側面

eラーニングの時間設計において、教育担当者が動画の「長さ」と同じくらい、あるいはそれ以上に頭を悩ませるのが、「eラーニングの受講時間を、法的にどう扱うか」という問題です。特に、業務時間外での受講を許可する場合や、助成金を活用する場合、この「時間」の定義は非常に重要になります。
ここでは、担当者が見落としてはならない法的・制度的な側面を解説します。
eラーニングは労働時間に含まれるのか?
結論から言えば、「会社の指示(業務命令)により、受講が義務付けられている場合は、労働時間に含まれる」というのが基本的な考え方です。
- 労働時間に含まれるケース
- 全社員必須のコンプライアンス研修、ハラスメント研修。
- 特定の部門(例:営業部)に対し、上長が「今週中までにこの製品知識研修を受講するように」と指示した場合。
- 受講しないと人事評価で不利益が生じる場合。
- これらは、たとえ自宅や移動中に受講したとしても、会社の「指揮命令下」にあるとみなされ、労働時間に該当します。もし、所定労働時間外(残業時間帯や休日)にこれらの受講を命じれば、当然ながら割増賃金(残業代)の支払い対象となります。
- 労働時間に含まれないケース
- 受講が完全に任意であり、受講しなくても一切の不利益がない(人事評価にも影響しない)場合。
- 社員が自己啓発のために、ラインナップされた研修コースから自由に選んで学習する場合。
- これらの「自主的な学習」は、労働時間とはみなされません。
教育担当者として取るべき対策
トラブルを防ぐため、eラーニング導入時には必ず「どの研修が必須(労働時間)で、どの研修が任意(労働時間外)なのか」を社内規程やガイドラインで明確に定義し、全従業員に周知徹底することが不可欠です。
また、必須研修は原則として「就業時間内に受講する」ようアナウンスし、そのための学習時間を業務スケジュールに組み込む配慮が、現場の不満を防ぎ、受講率を高める上で極めて重要です。
助成金申請で求められる「時間要件」とは
eラーニング導入・運用のために、厚生労働省の「人材開発支援助成金」などの活用を検討している企業も多いでしょう。その際、申請要件として「研修時間」が厳格に定められている点に注意が必要です。
- 「実訓練時間」ではなく「標準学習時間」で判断
- 対面研修の場合、「実際にかかった訓練時間(実訓練時間)」が基準となりますが、eラーニングや通信制の場合、受講者によって学習ペースが異なるため、教材の提供元が示す「標準学習時間」(または「標準学習期間」)で要件を満たしているかが判断されます。
- コースごとの時間要件
- 例えば、人材開発支援助成金では、コースによって以下のような時間要件が定められています(年度やコースにより変動あり)。
- 一般訓練コース: 標準学習時間が20時間以上であること。
- 特定訓練コース(リスキリング等): 標準学習時間が10時間以上であること。
- 例えば、人材開発支援助成金では、コースによって以下のような時間要件が定められています(年度やコースにより変動あり)。
- サブスクリプション型(受け放題)の場合
- 月額定額制のeラーニングサービスを利用する場合でも、「職務に関連した専門的な知識・技能の習得」を目的とした研修であり、その受講時間が(複数コースの合計で)10時間以上であること、といった要件を満たせば助成対象となる場合があります。
助成金の活用を視野に入れる場合、「動画1本が何分か」というミクロな視点だけでなく、申請したいコースの要件(例:合計10時間以上)を満たすように、「複数の動画や演習を組み合わせたパッケージ」としてカリキュラムを設計するというマクロな視点が不可欠になります。
まとめ

eラーニングの時間設計は、「何分が正解か」という単純な答え探しではありません。それは、「学習効果の最大化」と「受講者の業務負担の最小化」という、時に相反する要求のバランスを見極める高度な技術です。
この記事で解説してきたポイントを振り返ります。
最適な「時間」が研修の成果を決める
- 一般的な動画の長さは「5分〜15分」
- マイクロラーニングの考えに基づき、集中力を維持できる現実的な目安です。
- 目的別に時間を最適化する
- 知識習得(5-10分)、スキル習得(15-20分+演習)、マインドセット(20-30分)と、目的に応じて時間配分を変える必要があります。
- 集中力の限界は「15分」
- 15分を超える場合は、チャプター分割やクイズの挿入など、「飽きさせない工夫」が必須です。
- 他社事例から学ぶ
- 多くの企業が5分〜15分の動画を駆使し、対面研修からの移行で「2,800時間」もの工数削減を実現した例もあります。
- 法的・制度的側面を忘れない
- 「義務的研修=労働時間」という原則を理解し、助成金要件(例:合計10時間以上)も考慮したカリキュラム設計が求められます。
研修担当者の皆様が直面している「時間が長すぎて見てもらえない」「工数削減効果を説明できない」といった悩みは、これらの「時間設計の原則」を見直すことで、必ず解決の糸口が見つかります。
「動画を短くする」ことは目的ではありません。学習内容の「核」を見極め、余分な贅肉をそぎ落とし、受講者が最も効率的に学べる「最適な時間」をデザインすること。それこそが、eラーニング導入を成功に導き、企業の教育効果を飛躍的に高める第一歩となるのです。
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