はじめに
「研修で使ったパワーポイント資料、一度きりの発表でサーバーの肥やしになっていませんか?」
新入社員研修、コンプライアンス教育、新システムの操作マニュアル…。その都度作成される膨大なプレゼン資料は、企業の貴重な知的資産です。しかし、その多くが活用されずに埋もれています。
動画教材を外注する予算も時間もない、でも研修の質は落としたくない。そんなジレンマを抱える人事・研修担当者の方へ。この記事では、すでにお持ちのパワーポイントを最小限の手間で、効果的なeラーニング教材へと昇華させるための具体的な手法、メリット・デメリット、そして成功事例までを網羅的に解説します。
- はじめに
- eラーニングとパワーポイントの概要
- パワーポイントを使用したeラーニングの導入方法
- パワーポイントを使用するメリット
- パワーポイントを使用するデメリット
- 成功事例と導入のポイント
- eラーニングシステム導入ならWisdomBase
eラーニングとパワーポイントの概要
eラーニング教材の作成と聞くと、専門的なツールや高度な動画編集スキルが必要だと感じてしまうかもしれません。しかし、実は多くのビジネスパーソンが日常的に使用しているパワーポイントこそ、手軽かつ強力なeラーニング作成ツールとなり得るのです。
ここでは、まずeラーニングの基本と市場の動向、そしてパワーポイントが持つ教材作成ツールとしてのポテンシャルについて、具体的なデータを交えながら解説します。このセクションを読むことで、なぜ今「パワーポイント×eラーニング」が注目されているのか、その背景と可能性を深く理解できるでしょう。
eラーニングとは?
eラーニング(e-Learning)とは、パソコンやスマートフォン、タブレットなどのデジタルデバイスとインターネットを利用して学習を行う形態の総称です。時間や場所に縛られずに学べる利便性から、企業研修や大学教育、個人のスキルアップまで幅広い分野で活用が進んでいます。最大の特長は、学習者一人ひとりのペースで繰り返し学べる「個別最適化」と、学習履歴や成績をデータとして管理・分析できる「学習管理システム(LMS: Learning Management System)」との連携にあります。
パワーポイントの基本機能
Microsoft PowerPointは、単なるプレゼンテーション作成ソフトではありません。近年のバージョンアップにより、eラーニングコンテンツを作成するための機能が大幅に強化されています。多くの担当者がまだ気づいていない、教材作成に役立つ主な機能を見ていきましょう。
- スライドショーの記録
- スライドの切り替えタイミング、ナレーション(音声解説)、レーザーポインターの動きまでを記録できます。これにより、まるでセミナーをライブで受講しているかのような臨場感のあるコンテンツを手軽に作成可能です。
- 画面録画機能
- PC画面上の操作をそのまま録画し、スライドに埋め込むことができます。ソフトウェアの操作説明や、Webサイトのデモンストレーションなど、動きを見せる必要がある教材作成に絶大な効果を発揮します。
- 動画・音声の埋め込みと編集
- PCに保存されている動画ファイルや音声ファイルを直接スライドに挿入できます。さらに、トリミングやフェードイン・アウトといった簡単な編集もパワーポイント内で行えるため、他の編集ソフトを使う必要がありません。
- アニメーションと画面切り替え効果
- テキストや図形に動きをつけることで、学習者の注意を引きつけ、複雑な内容を段階的に分かりやすく説明できます。この視覚的な演出は、学習内容の記憶定着を助ける効果が期待できます。
- ビデオへのエクスポート
- 作成したスライドショーは、MP4やWMVといった汎用的なビデオ形式で書き出すことができます。これにより、LMSや動画共有プラットフォームへのアップロードが容易になります。
これらの機能を駆使することで、特別な知識がなくても、既存の資料をベースにインタラクティブで分かりやすいeラーニング教材を作成することが可能になるのです。
企業でのeラーニング活用例
パワーポイントを活用したeラーニングは、企業の様々な研修シーンでその真価を発揮します。その手軽さと柔軟性から、特に以下のような場面で導入が進んでいます。
- 新人・中途社員研修
- ビジネスマナーや企業理念、就業規則といった基礎的な知識は、一度教材化してしまえば繰り返し利用できます。担当者の負担を軽減しつつ、全ての新入社員に均質な情報を提供できます。
- コンプライアンス研修
- 情報セキュリティやハラスメント防止など、全社員が定期的に受講する必要がある研修に最適です。受講履歴をLMSで管理することで、コンプライアンス遵守の証明にもなります。
- 製品・サービス知識研修
- 新製品の発売やサービスの仕様変更があった際、迅速に営業担当者やサポート担当者へ情報を展開できます。動画や図を多用することで、複雑な製品特長も直感的に理解させることが可能です。
- 業務マニュアル・手順書
- 経費精算システムの操作方法や、特定の業務フローなどを画面録画機能を使って教材化します。担当者が変わっても業務品質を維持しやすく、問い合わせ対応の工数削減にも繋がります。
これらの例のように、汎用的な知識から専門的なスキルまで、幅広い教育ニーズに低コストかつスピーディーに対応できるのが、パワーポイント製eラーニングの強みです。
パワーポイントを活用したeラーニングのトレンド
パワーポイントを使ったeラーニングの世界も、技術の進化とともに常に変化しています。最近のトレンドをいくつかご紹介します。
- マイクロラーニングへの対応
- 1つのテーマを5分程度の短いコンテンツにまとめる「マイクロラーニング」が主流になりつつあります。パワーポイントなら、既存の長大な資料から特定の章だけを抜き出して、短い動画コンテンツとして再編集することが容易です。これにより、学習者は隙間時間を使って手軽に学習を進められます。
- インタラクティブ性の向上
- 単に視聴するだけの動画ではなく、学習者が能動的に関与できるコンテンツが求められています。パワーポイントのハイパーリンクやトリガー機能を応用すれば、クリックすると解説が表示されたり、クイズ形式で正誤判定を行ったりといった、擬似的なインタラクティブ要素を盛り込むことが可能です。
これらのトレンドは、パワーポイントが単なる「資料作成ツール」から、本格的な「eラーニングオーサリングツール(作成ツール)」へと進化していることを示しています。
パワーポイントを使用したeラーニングの導入方法
手持ちのパワーポイント資料を本格的なeラーニング教材に変える旅は、ここから始まります。このセクションでは、具体的なステップに沿って、企画準備からコンテンツ作成、そして運用・評価に至るまでの一連の流れを詳しく解説します。専門的な知識がない方でも迷わず進められるよう、必要なツールや実践的なテクニックを具体的に紹介します。読み進めることで、漠然としていた「作れたらいいな」という思いが、「これなら自分でも作れる」という確信に変わるはずです。
必要な準備と環境
本格的なeラーニング教材作成を始める前に、いくつかの準備が必要です。万全の環境を整えることが、後の作業効率を大きく左右します。
- ソフトウェア:
- Microsoft PowerPoint (Microsoft 365版を推奨)
- 最新の機能を利用するため、サブスクリプション版であるMicrosoft 365のPowerPointが最適です。特に「スライドショーの記録」機能は、買い切り版よりも高機能な場合があります。
- オーサリングツール(オプション)
- より高度なインタラクティブ性や、SCORM規格への対応を目指す場合は、PowerPointのアドインとして動作するオーサリングツールの導入を検討しましょう。代表的なツールには「iSpring Suite」や「Articulate Storyline 360」があります。これらはクイズ作成、対話シミュレーション、ソフトウェア操作のシミュレーションなど、多彩な機能を備えています。
- Microsoft PowerPoint (Microsoft 365版を推奨)
- ハードウェア:
- PC
- 動画のエンコード(書き出し)にはある程度のCPUパワーが必要となるため、比較的新しいスペックのPCが望ましいです。
- マイク
- ナレーションの品質は学習効果に直結します。PC内蔵マイクではなく、クリアな音質で録音できるUSB接続の外付けマイク(コンデンサーマイクなど)を用意することを強く推奨します。安価なものでも5,000円程度から十分な品質のものが手に入ります。
- 静かな録音環境
- 生活音や反響音が入らないよう、会議室や静かな部屋で録音作業を行いましょう。
- PC
パワーポイントの使用技術とツール
パワーポイントの標準機能だけでも、十分に質の高い教材は作成可能です。ここでは、特に重要な技術をいくつか紹介します。
- デザインテンプレートの活用
- 見た目の統一感は、教材のプロフェッショナル感を高める上で非常に重要です。パワーポイントの「デザイン」タブから好みのテーマを選ぶか、企業ブランドに合わせたオリジナルのデザインテンプレート(
*.potx
形式)を作成し、全てのページで一貫したデザインを適用しましょう。
- 見た目の統一感は、教材のプロフェッショナル感を高める上で非常に重要です。パワーポイントの「デザイン」タブから好みのテーマを選ぶか、企業ブランドに合わせたオリジナルのデザインテンプレート(
- ナレーション録音のコツ
- 「スライドショー」タブの「記録」機能を使います。スライドごとに録音・録画を一時停止・再開できるため、言い間違えてもそのスライドだけを録り直せます。台本を準備し、少しゆっくり、はっきりと話すことを意識しましょう。
- アニメーションの適切な使用
- アニメーションは、情報を提示する順序をコントロールし、学習者の理解を助けるために使います。過度な装飾は避け、「フェード」や「アピール」といったシンプルな効果を、重要なポイントを強調する目的で限定的に使用するのが効果的です。
- インタラクティブなクイズの作成
- パワーポイントの機能だけで、簡単な選択式クイズを作成できます。
- 質問スライドに選択肢(テキストボックスや図形)を配置します。
- 各選択肢にハイパーリンクを設定し、正解なら「正解です!」と書かれたスライドへ、不正解なら「残念、もう一度考えてみましょう」と書かれたスライドへジャンプするように設定します。
- 正解・不正解のスライドには、それぞれ元の質問スライドや次の問題スライドへ戻るためのリンクを設置します。
- パワーポイントの機能だけで、簡単な選択式クイズを作成できます。
コンテンツ作成のステップ
効果的なeラーニング教材を作成するには、計画的なステップを踏むことが重要です。
- Step 1: 企画・学習目標の設定
- 誰に(対象者)、何を(学習内容)、どのレベルまで(到達目標)理解してもらいたいのかを明確にします。例えば、「新任営業担当者が、製品Aの基本スペックと3つの主要なセールストークを説明できるようになる」といった具体的な目標を設定します。
- Step 2: 構成案(絵コンテ)の作成
- 学習目標を達成するための全体のストーリーを考え、各スライドで伝えるべきメッセージを書き出します。この段階で、ナレーションの台本(スクリプト)も大まかに作成しておくと、後の作業がスムーズになります。
- Step 3: スライド作成と素材準備
- 構成案に基づき、各スライドを作成します。テキストは簡潔に、図やイラスト、グラフを多用して視覚的に分かりやすくすることを心がけます。使用する画像やアイコンなどの素材もこの段階で収集・作成します。
- Step 4: ナレーションとアニメーションの設定
- 準備した台本を元に、ナレーションを録音します。その後、ナレーションのタイミングに合わせてテキストや図形にアニメーションを設定し、話の内容と画面の動きが連動するように調整します。
- Step 5: 書き出しと公開
- 完成したスライドショーを動画形式(MP4)で書き出します。「ファイル」→「エクスポート」→「ビデオの作成」から、解像度(Full HD 1080pが一般的)を選択して作成します。
運用と評価のポイント
教材は作って終わりではありません。学習効果を最大化するためには、適切な運用と評価のサイクルを回すことが不可欠です。
- 受講状況のモニタリング
- LMSを活用し、誰がどこまで学習したか、テストの正答率はどのくらいかを定期的に確認します。進捗が遅れている学習者には、個別にフォローアップを行いましょう。
- フィードバックの収集
- 教材の最後にアンケートを設置し、内容の分かりやすさや改善点について受講者から直接フィードバックをもらいます。Googleフォームなどを利用すれば手軽に実施できます。
- 効果測定
- 研修の前後で理解度テストを実施したり、研修後の業務パフォーマンス(例:製品知識研修後の営業成約率の変化)を追跡したりすることで、eラーNINGの効果を定量的に測定します。
- コンテンツの改善
- 収集したフィードバックや効果測定の結果に基づき、コンテンツを定期的に見直し、改善を加えます。パワーポイントで作成した教材は修正が容易なため、このPDCAサイクルを高速で回せるのが大きな利点です。
パワーポイントを使用するメリット
なぜ多くの企業が、専門のオーサリングツールではなく、身近なパワーポイントをeラーニング作成に活用するのでしょうか。
そこには、コスト面だけではない、無視できない数々のメリットが存在します。このセクションでは、パワーポイントがもたらす「視覚的な効果」「自由度の高さ」「インタラクティブ性」、そして「コスト効率」という4つの大きな利点について、具体的な根拠とともに掘り下げていきます。これらのメリットを理解することで、上司や関係部署に導入を提案する際の強力な説得材料を得ることができるでしょう。
視覚的なインパクトと効果
人間の脳は、テキスト情報よりも視覚情報を60,000倍速く処理すると言われています。パワーポイントは、この脳の特性を最大限に活かすことができるツールです。図形、グラフ、アイコン、画像などを駆使して情報を視覚化することで、複雑な概念や大量のデータも直感的に理解させることができます。
適切なアニメーションを使えば、プロセスの流れや要素間の関係性を動的に示すことができ、学習者の記憶定着を強力にサポートします。
カスタマイズの自由度
パワーポイントの最大の強みの一つは、その圧倒的なカスタマイズの自由度です。デザインテンプレート機能を使えば、企業のブランドカラーやロゴを反映させた、統一感のあるオリジナルデザインの教材を簡単に作成できます。これにより、学習コンテンツに対する社員の親近感や帰属意識を高める効果も期待できます。
また、スライドマスター機能を活用すれば、全スライドのフォント、色、レイアウトを一括で変更・管理できるため、デザインの修正やアップデートも非常に効率的に行えます。外部の制作会社に委託すると軽微な修正でもコストと時間がかかりますが、パワーポイントであれば内製で迅速かつ柔軟に対応可能です。この「自社でコントロールできる」という感覚は、運用担当者にとって大きな安心材料となるでしょう。
インタラクティブな学習環境
eラーニングにおいて、学習者を「受け身」から「能動的」な状態にすることは、学習効果を高める上で極めて重要です。パワーポイントは、標準機能だけでも学習者の参加を促すインタラクティブな要素を盛り込むことができます。
前述したハイパーリンクを使ったクイズ作成はもちろん、「トリガー」というアニメーション機能を使えば、「特定の図形をクリックしたら、関連する解説テキストが表示される」といった、より複雑なインタラクションも実現可能です。例えば、製品写真の各パーツをクリックすると、その部分の名称や機能がポップアップで表示されるようなコンテンツも作成できます。これにより、学習者は自分の興味や理解度に合わせて情報を深掘りすることができ、探求心を持って学習に取り組むことができます。これは、一方的に情報が流れるビデオ教材にはない、パワーポイントならではの利点と言えるでしょう。
コストエフェクティブなソリューション
コストパフォーマンスの高さは、パワーポイントをeラーニングに活用する最大の動機付けの一つです。多くの企業では、すでにMicrosoft Officeが標準導入されており、パワーポイントを利用するための追加的なライセンス費用が発生しません。
また、操作に習熟している社員が多いことも大きな利点です。特別なトレーニングを行わなくても、多くの担当者がすぐに教材作成に着手できます。これにより、外注費だけでなく、内製化に伴う教育コストや時間的コストも削減できます。既存のプレゼン資料という「資産」を流用できる点も考慮すれば、パワーポイントは最も手軽でコストエフェクティブなeラーニングソリューションであると言っても過言ではありません。
パワーポイントを使用するデメリット
パワーポイントは手軽で強力なツールですが、万能ではありません。その限界と注意点を理解しておくことは、後々の「こんなはずではなかった」という失敗を避けるために不可欠です。このセクションでは、パワーポイントでeラーニング教材を作成する際に直面しがちな4つのデメリットを率直に解説します。作成時間の問題、デザインの難しさ、データ量の肥大化、そしてインタラクションの限界。これらの課題と、その具体的な対策をあらかじめ知っておくことで、より現実的で成功確率の高い導入計画を立てることができるようになります。
作成に時間がかかる可能性
「手軽に作れる」というメリットの裏返しとして、こだわり始めると際限なく時間がかかってしまうというデメリットがあります。特に、アニメーションのタイミングを0.1秒単位で調整したり、ナレーションと完璧に同期させようとしたりすると、10分のコンテンツを作るのに数日を要することも珍しくありません。
また、既存のプレゼン資料をそのまま流用できるわけではない点にも注意が必要です。プレゼンテーション用の資料は、あくまで「話し手」の補助が前提です。一方、eラーニング教材は、学習者が一人で見て理解できる「自己完結型」でなければなりません。そのため、説明不足な部分を補うテキストを追加したり、構成を全面的に見直したりする作業が必要となり、予想以上に工数が膨らんでしまうケースがあります。
対策
完璧を目指さず、まずは「80%の完成度」でリリースすることを心がけましょう。また、作成前にしっかりとした構成案と台本を用意し、作業のゴールを明確にしておくことが、無駄な手戻りや時間の浪費を防ぐ鍵となります。
適切なデザインが必要
パワーポイントは誰でも使える反面、デザインスキルがないと、いわゆる「パワポ臭」のする素人っぽい教材になりがちです。文字が多すぎる、色が氾濫している、意味のないイラストやアニメーションが多用されているといったデザインは、学習者の集中力を削ぎ、学習意欲を低下させる原因となります。
教材の見た目は、内容の信頼性にも影響を与えます。プロフェッショナルな印象を与えるためには、デザインの基本原則(近接、整列、反復、対比)を意識し、一貫性のあるレイアウト、配色、フォントの使用を徹底する必要があります。これらのデザイン知識がないまま作成を進めると、学習効果が低いだけでなく、企業のブランドイメージを損なう可能性すらあります。
対策
社内にデザインテンプレートやガイドラインがあれば、それに準拠します。ない場合は、パワーポイントに標準搭載されている「デザインアイデア」機能を活用したり、有料のテンプレートを購入したりするのも一つの手です。色数は3色程度に抑え、可読性の高いフォント(メイリオ、游ゴシックなど)を選ぶといった基本を徹底するだけでも、クオリティは大きく向上します。
データ量が多くなる問題
ナレーション音声や高画質の画像、動画などを多用すると、パワーポイントファイルのサイズが数百MB、場合によっては1GBを超えてしまうことがあります。ファイルサイズが大きくなると、いくつかの問題が発生します。
- LMSのアップロード制限
- 多くのLMSには、アップロードできる1ファイルあたりのサイズに上限(例: 500MB)が設けられています。
- パフォーマンスの低下
- ファイルが大きいと、保存や編集時の動作が重くなり、作業効率が著しく低下します。
- 受講者のストレス
- 動画として書き出した場合も、ファイルサイズが大きいとストリーミング再生が途切れがちになり、学習者のストレスに繋がります。
特に、パワーポイントの「メディアの圧縮」機能だけでは、十分にファイルサイズを小さくできないこともあります。
対策
画像を挿入する前に、専用ツールでWeb用にリサイズ・圧縮しておきましょう。音声ファイルもMP3形式など、比較的軽いフォーマットを使用します。長時間のコンテンツは、テーマごとに複数の短いチャプターに分割することで、1ファイルあたりのサイズを抑えることができます。
インタラクションの制限
パワーポイントのハイパーリンクやトリガー機能で作れるインタラクションは、あくまで擬似的なものです。専用のオーサリングツールと比較すると、その機能には明確な限界があります。
例えば、以下のような複雑な設定はパワーポイント単体では実現できません。
- 変数の使用
- 学習者の名前を記憶して表示したり、クイズの得点を累積して最後に表示したりすること。
- 複雑な条件分岐
- 「問1と問3に正解した場合はAのコースへ、それ以外はBのコースへ進む」といった複雑なシナリオ分岐。
- 自由記述式の問題と自動採点
- テキスト入力式の問題を作成し、キーワードを元に自動で採点すること。
これらの高度なインタラクティブ性を求める場合、やはり「iSpring Suite」や「Articulate 360」といった専用ツールの導入が必要になります。自社の研修で求められるインタラクティブ性のレベルを見極め、パワーポイントで十分なのか、専用ツールが必要なのかを事前に判断することが重要です。
成功事例と導入のポイント
理論や機能を知るだけでは、自社での成功イメージは描きにくいかもしれません。この最終セクションでは、パワーポイントによるeラーニング導入を成功に導いた企業の具体的な事例や、導入をスムーズに進めるためのステップ、そして長期的な成果に繋げるための運用方法を解説します。先人たちの知恵と経験から学ぶことで、あなたの会社が直面するであろう課題へのヒントや、導入を成功させるための具体的なアクションプランが見えてくるはずです。
特に有効だった企業の事例
具体的な企業名は控えさせていただきますが、実際にあった成功事例をモデルに、そのポイントをご紹介します。
事例:中堅製造業A社(従業員500名)
- 課題
- 全国の営業拠点に散らばる営業担当者に対し、新製品の技術情報を迅速かつ均質に展開する必要があった。しかし、従来型の集合研修はコストと時間がかかり、拠点ごとの理解度にバラつきが生じていた。
- 導入
- 製品開発部門が作成した既存の技術説明用パワーポイントをベースに、人事部がeラーニング化を主導。開発担当者がナレーションを録音し、複雑な構造部分はアニメーションで視覚的に表現。各章の終わりに、ハイパーリンク機能を使った簡単な理解度チェッククイズを設置した。
- 成果
- 新製品投入から全営業担当者が研修を完了するまでの期間を、従来の1ヶ月から1週間に短縮。
- LMS(オープンソースのMoodleを導入)で受講状況とクイズの正答率を可視化。理解度が低い担当者には、上長が個別にフォローアップすることで、全体の知識レベルの底上げに成功。
- 集合研修にかかっていた出張費や会場費など、年間約300万円のコスト削減を達成。
この事例の成功要因は、「既存資産の有効活用」「スモールスタート」「現場部門との連携」の3点に集約されます。完璧な教材を最初から目指すのではなく、まずは手持ちの資料で試作し、効果を検証しながら改善していくアプローチが功を奏しました。
導入の際の初期ステップ
eラーニング導入プロジェクトを成功させるためには、最初のステップが肝心です。以下の手順でスモールスタートを切ることをお勧めします。
- パイロットプロジェクトの選定
- 全社展開をいきなり目指すのではなく、まずは対象者を限定した小規模なプロジェクトから始めましょう。例えば、「営業部1課の新製品研修」や「経理部の経費精算システムマニュアル」など、成果が見えやすく、関係者の協力が得やすいテーマを選びます。
- MVP(Minimum Viable Product)の作成
- 「実用最小限の製品」という考え方で、まずは最低限の機能を持った教材を一つ作ってみます。凝ったアニメーションやデザインは後回しにして、まずは「既存のパワポ+ナレーション」だけでも構いません。目的は、教材作成からLMSへのアップロード、受講までの一連の流れを実際に体験し、課題を洗い出すことです。
- テストグループによる評価
- 作成したMVP教材を、パイロットプロジェクトの対象者に実際に受講してもらい、フィードバックを収集します。「音声は聞き取りやすいか」「説明は分かりやすいか」「操作で迷うことはないか」など、具体的な意見を集め、改善に繋げます。
この小さな成功体験を積み重ねることが、本格展開に向けた社内の理解と協力を得るための最も効果的な方法です。
成果を上げるための運用方法
教材を公開した後の運用フェーズで成果を上げるためには、学習を「促し」「評価し」「改善する」仕組みが必要です。
- 学習の習慣化を促す
- ただLMSに教材を置くだけでなく、対象者への定期的なリマインド(メールや社内チャット)や、上長からの声がけが重要です。また、「今月の推奨コンテンツ」などを社内ポータルで紹介し、学習のきっかけを作る工夫も有効です。
- ゲーミフィケーションの導入
- 学習にゲームの要素を取り入れることで、モチベーションを高めることができます。例えば、コースの完了数に応じてバッジを付与したり、部署対抗で平均点を競ったりするのも面白いでしょう。LMSによっては、こうした機能が標準で備わっています。
- 成果の可視化とフィードバック
- 学習成果(テストの点数や修了証など)が学習者本人や上長に見えるようにします。良い成績を収めた社員を表彰するなど、学習の努力が評価される文化を醸成することが、継続的な利用に繋がります。
継続的な改善とアップデート
ビジネス環境や社内ルールは常に変化します。eラーニング教材も、一度作ったら終わりではなく、生き物のように常に最新の状態に保つ必要があります。
- 定期的な見直し
- 最低でも年に1回は、全コンテンツの内容が現状と合っているかを確認する棚卸しを行いましょう。法改正、製品仕様の変更、社内プロセスの見直しなどがあった場合は、速やかに内容を修正します。
- アップデートの容易さを活かす
- パワーポイント教材の最大の利点の一つが、この修正・アップデートの容易さです。動画を丸ごと撮り直す必要はなく、該当するスライドを数枚修正し、ナレーションを一部録り直すだけで、すぐに最新版を公開できます。この機動力を活かし、常に「使える」コンテンツを提供し続けることが、eラーニングシステム全体の信頼性を高める上で不可欠です。
パワーポイントという身近なツールから始まるeラーニングへの挑戦は、あなたの会社の「人」と「知識」という最も重要な資産を、未来に向けてさらに輝かせるための第一歩となるでしょう。
eラーニングシステム導入ならWisdomBase
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WisdomBase(ウィズダムベース)は、クラウド型のeラーニングシステムとして、教材の管理から学習状況の可視化までを一括で行える次世代型LMS(学習管理システム)です。
直感的なユーザーインターフェースと多彩な機能で、企業研修の効率化と成果向上を同時に実現。導入直後から社内教育をスムーズに運用できるよう設計されており、業務負担の軽減と学習効果の最大化を支援します。
1. わかりやすいUIと統合型の運用機能
コースの作成、進捗管理、成績の確認までをすべてWeb上で完結。受講者も管理者も迷わない画面設計で、初日からスムーズな運用が可能です。結果として、受講率の向上と管理業務の効率化が同時に叶います。
2. あらゆる教材形式に対応した柔軟性
動画、PDFなど、幅広いコンテンツ形式を簡単にアップロード可能。インタラクティブな教材作成もスムーズに行えるため、最新のトレンドに即した学習体験をスピーディーに提供できます。
3. カスタマイズとサポートで企業研修を強力に支援
導入後も、経験豊富な専任スタッフがオンラインで継続支援。トラブル対応はもちろん、権限の細かな設定もお任せいただけます。事業の成長に応じたスケールアップも柔軟に対応可能です。
4. 学習状況の可視化と継続的な改善
ダッシュボード上で受講データやテスト結果をリアルタイムに分析。得られた学習データをもとに教材の改善が行えるため、研修効果を継続的に向上させることができます。これにより、教育コストの最適化とスキル向上の両立が可能になります。
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