はじめに
「助成金制度があるのは知っているけど、種類が多くてどれを使えばいいのか、手続きも複雑そうで手が出せない…」
中小企業の人事担当者、総務担当者、そして経営者の皆様、このような悩みを抱えていませんか? 厚生労働省や都道府県労働局の公式資料は専門用語が多く、内容を理解するだけでも一苦労ですよね。
この記事では、そんなあなたの悩みを解決するために、人材開発支援助成金について、どこよりもわかりやすく解説します。 この記事を読めば、助成金を活用して社員教育のコストを抑え、効果的な研修を実施するための具体的なステップが見えてくるはずです。
- はじめに
- 人材開発支援助成金とは
- 人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金の違い
- 人材開発支援助成金のコース一覧
- 人材開発支援助成金の申請の流れ
- 電子申請も可能
- 助成⾦活⽤成功のためのポイント
- 人材開発支援助成金のよくある質問
- 【研修提供企業向け】人材開発支援助成金に対応した研修を提供するならWisdomBase
- まとめ
人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金は、企業が従業員の職業能力開発を計画的に行う取り組みを支援するための助成金制度です。労働者のキャリア形成を促進し、企業全体の生産性向上や競争力強化に貢献することを目的としています。
具体的には、事業主等が雇用する労働者に対し、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練などを計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。
人材開発支援助成金による助成の内容は、主に以下の通りです。
- 訓練経費(経費助成)の一部助成
- 訓練期間中の賃金(賃金助成)の一部助成
- OJT実施に対する助成(OJT実施助成)
具体的な助成率や助成額は、選択するコースや企業の規模(中小企業か大企業か)によって異なりますが、例えば、事業展開等リスキリング支援コースでは、訓練費用の75%が助成対象になり、1時間1,000円の賃金助成が受けられます。
また訓練終了後、一定期間内に賃金が上昇したり、職務に関連する資格を取得して資格手当を支給したりした場合にも助成の対象となることがあります。
人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金の違い
人材開発支援助成金と混同されやすい助成金に「キャリアアップ助成金」があります。
人材開発支援助成金が、労働者の職業能力開発全般を支援するものです。 一方で、キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善などのキャリアアップを促進することに特化した助成金制度です。
ただし、これら二つの助成金は連携して活用することが可能です。 例えば、人材開発支援助成金の特定の訓練を修了した非正規雇用労働者を正社員化した場合、キャリアアップ助成金(正社員化コース)において重点支援対象者となり、通常よりも有利な条件で助成を受けられる場合があります。
また、人材開発支援助成金の「訓練実施計画届」を提出する際に、キャリアアップ助成金(正社員化コース)の「キャリアアップ計画書」とみなす取り扱いを選択することも可能です。
これにより、両方の助成金を申請する際の手続きの一部を簡素化できます。ただし、この簡素化の扱いは、計画届を紙で提出する場合に限られ、電子申請には適用されない点に注意が必要です。
人材開発支援助成金のコース一覧
人材開発支援助成金には、企業の目的や訓練内容に応じた複数のコースが設けられています。主なコースは以下の通りです。
人材育成支援コース
職務遂行のために必要な専門的な知識・技能を習得させるための訓練等を支援するコースです。
幅広い職種や業種で活用しやすく、従業員の基本的なスキルアップから専門性の向上まで、多岐にわたる訓練に対応可能です。
教育訓練休暇等付与コース
労働者が自発的に行う職業訓練等のために必要な有給教育訓練休暇や長期教育訓練休暇、または教育訓練短時間勤務制度を導入・実施した場合に助成されます。
従業員の主体的な学びを後押しし、学習意欲の高い人材の育成を目指す企業に適しています。
人への投資促進コース
デジタル・グリーン分野等の新たな成長分野等で必要となる人材の育成や、企業内のDX化・GX化を推進するための訓練などを支援するコースです。
このコースには、定額制訓練、自発的職業能力開発訓練(定額制サービスによる訓練以外)、高度デジタル人材訓練、成長分野等人材訓練、情報技術分野認定実習併用職業訓練が含まれます。
特にITスキルや新しい技術トレンドに対応できる人材育成に力を入れたい企業におすすめです。
事業展開等リスキリング支援コース
事業を新しく開始したり、事業を転換したりする際に、既存の事業とは異なる分野の新しい知識・技能を習得させるための訓練などを支援するコースです。
企業の変革期において、従業員の新たなスキル習得をサポートし、事業の多角化や新分野への挑戦を後押しします。
建設労働者認定訓練コース
建設業の事業主等が、認定職業訓練として行う建設関連の訓練などを支援するコースです。建設業界に特化したコースであり、専門的な技能や知識を持つ建設労働者の育成に役立ちます。
建設労働者技能実習コース
建設業の事業主等が、建設労働者に建設関連の技能実習をOFF-JT(座学や実技など、通常の仕事を離れて行う訓練)により行わせる場合に支援するコースです。こちらも建設業界向けで、実践的な技能習得を重視した訓練が対象となります。
建設労働者認定訓練コース・建設労働者技能実習コースの詳細はこちら https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kensetsu-kouwan/kensetsu-kaizen.html
障害者職業能力開発コース
障害のある労働者に対して、個々の状況に応じた職業能力の開発や向上のための訓練などを支援するコースです。障害のある従業員の雇用促進と定着、そして能力発揮をサポートするための重要なコースです。
※障害者職業能力開発コースは令和6年4月より独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が支給業務を行う障害者雇用納付金制度に基づく助成金へ移管しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/shougai_trial_00002.html
人材開発支援助成金の申請の流れ
人材開発支援助成金の支給を受けるためには、計画的な準備と所定の手続きが必要です。大まかな流れは以下の通りです。
1. 職業能力開発推進者の選定
まず、社内で従業員の職業能力開発に関する計画作成や実施、相談・指導を行う「職業能力開発推進者」を選任する必要があります。
- 選任のポイント
- 事業内職業能⼒開発計画の作成‧実施や労働者への相談‧指導が⾏える権限を有する者を選任
- 教育訓練部⾨の部課⻑、労務‧⼈事担当部課⻑などが適任事業所ごとに1名以上の推進者を選任
- 推進者の役割
- 事業内職業能⼒開発計画の作成‧実施
- 職業能⼒開発に関する労働者への相談‧指導
- 社内の⼈材育成の取り組みを推進するキーパーソン
2. 事業内職業能⼒開発計画の策定と周知
次に、自社の人材育成の基本方針や目標、具体的な取り組みなどを盛り込んだ「事業内職業能力開発計画」を策定し、従業員に周知する必要があります。
- 計画の内容
- 経営理念及び経営⽅針に関する事項
- ⼈材育成の基本⽅針や⽬標
- 職業能⼒の開発及び向上の促進に関する事項
- 定期的なキャリアコンサルティングの機会の確保
3. 計画届の作成と提出
実施を予定している職業訓練について、訓練の概要や対象者などを記載した「職業訓練実施計画届(様式第1-1号)」を作成し、必要書類を添付して管轄の労働局に提出します。
提出期限は、原則として訓練開始日の6か月前から1か月前までです。郵送の場合は、労働局への到達日が提出日となり、消印は有効ではない点に注意が必要です。
4. 訓練の実施
提出した計画届に沿って、従業員への職業訓練を実施します。
訓練実施中は、訓練内容や出席状況などを正確に記録しておくことが非常に重要です。訓練にかかる経費は、事業主が一旦全額負担し、支給申請までに支払いも完了しておく必要があります。
5. ⽀給申請の⼿続き
訓練終了後、原則として訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に、管轄の労働局に支給申請を行います。支給申請時には、訓練実施状況や経費、賃金に関する書類など、多数の書類提出が必要となります。
申請書類は、支給決定日の翌日から起算して5年間保存する必要があることも覚えておきましょう。
電子申請も可能
人材開発支援助成金の申請は、紙での提出に加え、電子申請も可能です。電子申請を利用することで、窓口に出向く手間や時間を削減できます。社会保険労務士や代理人による申請にも対応しています。
STEP 1: GビズIDの取得
電子申請を行うためには、まず「GビズIDプライムアカウント」が必要です。GビズIDは、公式サイト法人代表者が申請・取得します。このIDは、様々な行政サービスをオンラインで利用するための共通認証システムですので、取得しておくと他の手続きでも役立つ可能性があります。
STEP 2: 雇⽤関係助成⾦ポータルにログイン
GビズIDを取得したら、次に雇用関係助成金ポータルにログインします。このポータルサイトが、電子申請の窓口となります。
STEP 3: 申請するコースの選択
ポータルサイトにログイン後、申請したい助成金コースを選択します。人材開発支援助成金の中にも複数のコースがあるため、自社が利用するコースを間違えないように選択しましょう。
STEP 4: 申請情報の⼊⼒と書類添付
システム上で必要事項を入力し、必要な添付書類をPDFなどの形式でアップロードして送信します。初回ログイン時に事業所情報を登録しておくと、次回以降の申請で入力の一部が省略されるといったメリットもあります。
注意点として、計画届を紙で提出した訓練については、その後の変更届や支給申請も紙で行う必要があります。しかし、別の訓練計画であれば、電子申請を利用することは可能です。
助成⾦活⽤成功のためのポイント
人材開発支援助成金をスムーズに活用し、確実に支給を受けるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
「申請したのに不受理だった…」なんて事態を避けるためにも、事前に押さえておくべき注意点を知っておくことが大切です。
早めの計画:訓練開始の余裕を持って準備を始める
計画届には提出期限があります。申請準備には、書類作成や社内調整など、予想以上に時間がかかる場合があります。そのため、訓練開始日から逆算し、余裕を持ったスケジュールで計画的に進めることが非常に重要です。
記録の徹底:訓練実施状況、出席状況を正確に記録
訓練の実施状況や対象労働者の出席状況は、支給申請時に厳しく確認される重要な項目です。日々の記録を怠らず、正確に行い、関連書類とともに適切に保管しておく必要があります。
提出期限の厳守:計画届、変更届、⽀給申請の期限を守る
計画届、計画変更届、支給申請にはそれぞれ提出期限が定められています。これらの期限を1日でも過ぎると、原則として申請が受け付けられない可能性があります。期限管理を徹底し、必ず期限内に提出することが不可欠です。
要件の確認:訓練内容が職務関連訓練に該当するか確認
助成の対象となる訓練は、従業員の職務に関連する専門的な知識や技能の習得を目的とするものである必要があります。実施しようとしている訓練内容が、助成要件を満たしているかどうか、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
人材開発支援助成金のよくある質問
人材開発支援助成金で多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
「この訓練を受講すれば助成対象となる」と厚⽣労働省が認めた訓練はありますか?
厚生労働省が、特定の訓練プログラムや研修機関を事前に指定し、「この訓練を受ければ必ず助成対象となる」と認めているわけではありません。助成の可否は、企業の業種、対象労働者の職務内容、訓練内容との関連性、実際に実施された訓練内容、訓練にかかった経費や賃金の支払い状況など、様々な要件を総合的に審査し、個々の申請ケースごとに判断されます。
会社の休⽇に従業員に訓練を受けさせた場合、助成対象になりますか?
原則として、所定労働時間外や会社の休日に実施した訓練は、たとえ従業員に割増賃金を支払っていたとしても、賃金助成の対象とはなりません。
訓練機関やコンサルタントが「申請⼿続きは全てこちらでやります」と⾔っていますが、任せても⼤丈夫ですか?
助成金は事業主に支給されるものであるため、助成金を受け取る事業主自身が、助成金の支給要件や必要な手続きの内容を正確に理解しておくことが非常に重要です。
申請書類の偽造や事実と異なる記載など、不正な行為は不正受給にあたります。仮に申請手続きを代行した第三者(訓練機関やコンサルタント等)が不正を行った場合であっても、助成金を受け取った事業主が不正受給として認定され、処分が科される可能性があります。
したがって、申請手続きを外部に依頼する場合でも、事業主自身が内容をしっかり確認し、責任を持つ必要があります。人材開発支援助成金の制度に詳しい社会保険労務士に依頼することも可能であり、代理申請も認められています。
【関連記事】人材開発支援助成金で約1億円が不正受給!不正の実態や罰則を解説
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動画の早送り・スキップ制限機能 | 助成金対象の研修では受講時間が厳密に管理されるため、動画のスキップ・早送りを制限する機能を搭載。適正な受講管理が可能。 |
受講時間の制限 | 受講者がサイトを利用できる時間を制限する機能です。勤務時間のみにアクセスを制限し、助成金の受給対象外にならないようにします。 |
離席時動画停止機能 | 受講中に離席した場合、自動で動画が停止し、学習状況を正確に記録。 |
顔認証機能 & インカメラ監視機能 | 受講者が本人であることを確認するための顔認証機能を搭載。さらに、インカメラによる監視機能も備えており、なりすまし受講を防ぐ。 |
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まとめ
この記事では、人材開発支援助成金について、その概要から具体的なコース内容、申請方法、活用成功のポイント、さらにはよくある質問に至るまで、網羅的に解説してきました。
コースがたくさんあり敬遠されがちな助成金制度ですが、ポイントを押さえれば、企業にとって非常に有効な人材育成ツールとなり得ます。
人材開発支援助成金を活用することで、従業員のスキルアップはもちろんのこと、企業の生産性向上、競争力強化にも繋がります。
重要なのは、自社の課題や目的に合ったコースを選び、計画的に準備を進め、正確な手続きを行うことです。不明な点は専門家や労働局に相談し、制度を正しく理解した上で活用しましょう。