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資格ソムリエから学ぶ「テスト問題」の作り方

研修の理解度チェックのためにテストを作ることになったけど、問題の作り方がわからない…

「テストを受ける」ことはあっても、「テストを作る」経験をしたことのある方は少ないのではないでしょうか?
ある日突然、上司からテスト問題の作成業務を任されても、何から手をつければ良いかわからないですよね。

そこで今回は、「資格ソムリエ」として活躍されている、はやし総合支援事務所の林雄次さんに、テスト問題の作り方についてお話をうかがいました。
本記事では、林さんにインタビューした内容を元に、テスト問題の作成のポイントを解説します。

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取得資格350!?「資格ソムリエ」林さんとは?

本日はインタビューをお受けいただいてありがとうございます!

いえいえ、はやし総合支援事務所の林雄次です。よろしくお願いいたします。

350種類も資格を持っているなんて驚きです!まずは林さんの経歴についてご紹介します。

林さんは、大手IT企業でエンジニアとして就職されます。
在職中に行政書士と社労士の資格を取得し、士業とITの知見を活かした「デジタル士業」として独立。
現在ははやし総合支援事務所の代表として、企業の働き方改革や業務改善、ITツールの導入などを支援をされています。
また350の資格を取得し(2023年4月時点)、「資格ソムリエ」として資格を活かしたブランディングやキャリア相談など、さまざまなメディアに出演されています。

過去にテスト問題の作成を依頼させていただいた経緯から、今回のインタビューが実現しました。

テスト問題の作り方を4ステップで解説

さっそくですが、どのような手順で作問されるのでしょうか?

そうですね、まずはテストを作る前に目的や条件を確認しましょう。

ステップ1:テストの目的を明確にする

テスト問題をいきなり作り始めてはいけません。
テストをする目的を明確にし、テスト作成に関わる人全員の認識を揃えましょう。

目的が曖昧なまま作問に取り掛かるのは危険です。
問題を作成している最中に、方向性が二転三転したり問題内容が重複したりすることで、スケジュールの遅延などが発生します。
また、測りたい知識やスキルが測れないといった問題も発生します。

そのような事態を避けるためにも、テストを作成する前に以下の点について整理しておきましょう。

  • 何のためにテストを実施するのか?
  • 測定したい知識・スキルは何か?
  • 受験対象者は誰か?
  • 学習教材の有無は?
  • テストの出題範囲は?
  • 試験の実施方法は?

目的の具体例

ここで架空の会社を例に挙げ、テスト実施の目的や条件について説明します。

例)A社は自社メディアを運営している。今年度から記事の投稿頻度を増やす方針となった。しかし社内に記事を執筆できる人材がいないことが課題である。

  • 何のためにテストを実施するのか?
    → ライターの採用活動のため。業務委託のライターを雇う際にライターの質を一定にしたい。
  • 測定したい知識・スキルは何か?
    → ライティングの基礎や書き方のスキルを知っている。SEOを考慮したブログ記事が書ける。
  • 受験対象者は誰か?
    → ライターとして働きたい求職者
  • 学習教材の有無は?
    → なし
  • テストの出題範囲は?
    → ライティングの基礎知識(参考書籍◯冊)、SEOの基礎知識(参考書籍◯冊)
  • 試験の実施方法
    → オンライン試験システム※を導入する

※オンライン試験システムは、PCやスマホなどのデバイスを使い試験を受験できるシステムです。オンライン試験システムについてご興味のある方は、以下の記事をご覧ください。

ステップ2:テスト問題の仕様を決める

目的や条件が決まったら、目的を達成するためのテストの仕様を決めましょう。

テスト問題の仕様は以下の点について決めると良いでしょう。

  • 問題数
  • 問題形式
  • 合格基準・配点
  • 制限時間
  • 解説の有無

問題数を決める

出題範囲や測りたい知識、スキルの深さを考慮して問題数を決めましょう。
同じ出題範囲だとしても、問題数が10問と100問では1問あたりの問題の粒度が変わります。

問題形式を決める

測りたい知識やスキルに合わせて問題形式を選択しましょう。問題形式には、「選択問題」「穴埋め問題」「記述問題」などがあります。

選択問題の場合、穴埋め問題や記述問題と比べて、テストの難易度は低くなります。オンライン試験システムを導入するのであれば、採点作業を自動化することもできます

一方で誤答の内容を考えるのが難しいデメリットがあります。記述問題であれば、「お題について記事を◯文字以内で書く」など、自由度の高いテスト問題を作成することが可能です。

合格基準・配点を決める

目的に応じて合格基準を決めましょう。
情報セキュリティや法律関連など、理解していることが必須条件である知識を問うテストは、満点が合格点となるでしょう。
就職のためのWebテストであれば、求める基準をクリアしていれば良いはずです。

また、配点の設定も重要です。各問題の難易度や重要度に応じて点数を振り分けることで、テストの結果がより妥当性のあるものになります。
例えば基礎的な知識確認には1〜2点、実務に直結する応用問題には5点など、学習者や受験者に期待するレベルを反映させて調整しましょう。

制限時間を決める

テストの制限時間は、問題数や難易度とバランスを取ることが重要です。
設定の目安としては、以下の観点を踏まえて調整すると良いでしょう。

  • 1問あたりに必要な解答時間を見積もる(例:選択問題なら1〜2分、記述式なら5分程度)
  • 全体の問題数と合計時間の妥当性を確認する
  • 実施目的に応じて調整する
  • 研修の理解度チェック:短めに設定し、気軽に受けられるようにする
  • 採用試験や資格試験:一定のプレッシャーを与え、知識だけでなく時間配分のスキルも確認する

解説の有無を決める

テストの目的や問題の内容により、解説の有無を決めます。
採用のためのWebテストの場合は、次の選考に進めるかどうかの判断材料としてテストを利用するため、解説はなくても良いでしょう。
一方で、研修の理解度チェックとしてテストを活用する場合は、解説により受験者の理解を深めることができます。

ステップ3:問題を作成する

ようやく問題作りですね。決めることがたくさんあって大変そうです…。

問題をただ作るだけなら簡単です。しかし「良い問題」を作るためには、テストの目的や、出題範囲やテストの問題数などを決めておく必要があります。

テストの目的や仕様に合わせて問題を作成します。
複数人で分担して問題を作成する場合は、テストの目的や仕様、サンプルテストを共有しておきましょう。
問題を作成する際のポイントは以下の通りです。

  • 出題範囲のバランスを考える
  • 設問や選択肢の表記ルールを決める
  • 分かりやすい文章を意識する
  • 受験者層に合わせた言葉を選ぶ

ポイント1:出題範囲のバランスを考える

特定の分野だけ問題数が多いなど偏りはありませんか?
出題範囲を網羅するように問題を作成しましょう。

ポイント2:設問や選択肢の表記ルールを決める

受験者が問題に集中できるように、表記は統一させましょう。表記ルールをまとめたマニュアルがあると便利です。
例えば、以下のようにルールを決めると良いでしょう。

  • 「です・ます」調で表記を統一する。
  • 問題文は「正しいものを選べ」で表記する。「適切なものを選べ」「合っているものを選べ」は使わない。
  • 「良い」で統一する。「よい」「いい」は使わない。

ポイント3:分かりやすい文章を意識する

句読点の位置は適切か、冗長な文章ではないか、二重否定を使った表現は使っていないかなど、分かりやすい文章を常に意識して問題を作成しましょう。
特に、2通りに解釈できてしまう表現には注意しましょう。
例えば「小さな星柄のハンカチ」であれば、「星柄」が小さいのか、それとも「ハンカチ」が小さいのか判断できません。
他の人に文章をチェックしてもらう、日数を空けて文章を読み返すなどすると良いでしょう。

ポイント4:受験者層に合わせた言葉を選ぶ

専門用語や英語での表記など、受験者層のレベルに合わせた言葉を選びましょう。
専門家向けのテストであれば、専門用語を使用したほうがシンプルな文章になります。しかし一般人が受験するテストであれば、噛み砕いた表現を用いたほうが受験者が理解しやすいでしょう。

ステップ4:パイロットテストを実施する

作った問題は、いきなり本番に使わず 小規模なテスト(プレテスト) を実施すると安心です。

作成した問題は、すぐに本番で使用せず、まずはパイロットテスト(試行テスト)を実施しましょう。

  • 小規模なグループに解いてもらうことで、以下の点を確認できます。
  • 制限時間が妥当か(想定通りの時間で解答できるか)
  • 問題の難易度が適切か(正答率が極端に高すぎる/低すぎる設問がないか)
  • 設問の表現に誤解を招く部分がないか

この段階で受験者の声を聞くと、設問のわかりにくさや解答形式の改善点なども明らかになります。

本番前に課題を洗い出して修正しておくことで、信頼性の高いテスト運営が可能になります。

ステップ5:問題を分析し、改善する

パイロットテストや本番実施後は、結果の分析と改善が欠かせません。

一度作ったテストをそのまま使い続けると、測定したい力を正しく反映できなくなるリスクがあります。

分析のポイントは次の通りです。

  • 正答率:難易度が適切かを確認する
  • 無答率:時間不足や設問の理解不足を示すサイン
  • 選択率:誤答肢が効果的に機能しているかを確認する
  • 識別力:優秀な受験者とそうでない受験者を区別できる設問になっているか

さらに、受験者へのフィードバックを取り入れると、改善の精度が高まります。

「理解度チェックを目的にする場合は解説を充実させる」「採用試験では出題範囲の網羅性を強化する」など、目的に応じて改善を重ねていきましょう。

生成AIでテスト問題も作成できる?【追加】

近年では、ChatGPTをはじめとする生成AIを活用してテスト問題を自動で作成する方法が注目されています。

従来は人が一問ずつ考える必要がありましたが、AIを使えば出題形式やレベルを指定するだけで、短時間で複数の問題を作成できます。

もちろん、そのまま使えるわけではなく、出題範囲の設定・難易度の調整・内容のチェックといった人の手による監修は欠かせません。

しかし、研修や採用試験の担当者にとっては、ゼロから作問する負担を大幅に減らせる大きなメリットがあります。

実際の手順やプロンプト(AIへの指示文)の工夫次第で、選択式・記述式・ケーススタディ型など、さまざまな形式の問題をスピーディーに用意することも可能です。

具体的な作成フローやすぐに使えるプロンプト例、導入時の注意点は下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

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まとめ

思っていた以上にテスト作成の手順が多くて驚きです。

簡単そうに思われがちなのですが、意外とやることが多いですね。

林さんが、クライアントさまからテスト問題の作成依頼を受けた際に、苦労した点はありましたか?

ご依頼時に、クライアントさまがテストの目的や出題範囲、問題数などをイメージできていない点でしょうか。
「何でもいい」と仰っていても、「何でもいい」ということはまずありません。笑
満足いただけるテスト問題を作るためにも、課題や目的についてのヒアリングは大切にしています。

テストをする目的は何か?何を測りたいのか?など問題を作成する前段階が重要なことが分かりました。貴重なお話ありがとうございました!

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