
はじめに
「あのセミナー動画、アーカイブ配信して大丈夫か?」
安易な公開が、登壇者や参加者との重大なトラブルに発展するケースは後を絶ちません。スライドの図表、BGM、参加者の顔。気づかぬうちに「著作権侵害」を犯していませんか?本記事では、セミナー動画の権利処理を網羅的に解説し、動画という「資産」を安全に活用し、ビジネスを最大化するための実践知を提供します。
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セミナー動画における著作権の基本

著作権は、コンテンツ制作の根幹をなすルールです。しかし、セミナー動画では登壇者のスライド、BGM、参加者のチャットなど、権利が複雑に絡み合います。まずは「何が」「誰に」守られているのか、その基本原則を正しく理解することから始めましょう。知らなければ、意図せずとも「侵害」の当事者になってしまいます。
著作権が守るものとその範囲
著作権とは、思想又は感情を創作的に表現した「著作物」を保護するための権利です。これは、文化庁が所管する「著作権法」によって定められています。
重要なのは、著作権が保護するのは「アイデア」や「事実」そのものではなく、それを具体的に「表現」したものである、という点です。例えば、「マーケティングの重要性」というアイデア自体に著作権はありませんが、「マーケティングの重要性」について解説した講師の具体的な話術やスライドの表現は「言語の著作物」や「図形の著作物」として保護されます。
著作権は、大きく分けて2つの権利群から成り立っています。
①著作権(財産権)
著作者の財産的な利益を守る権利です。これには、
- 複製権(コピーする権利)
- 公衆送信権(インターネットで配信する権利)
- 譲渡権(オリジナルを他人に譲り渡す権利)
- 翻案権(編集・翻訳・編曲などを行う権利)
などが含まれます。セミナー動画の「アーカイブ配信」や「二次利用」は、まさにこの公衆送信権や翻案権に直結します。これらの権利は、他人に譲渡したり、利用を許諾(ライセンス)したりすることが可能です。
②著作者人格権
著作者の人格的な利益(こだわりや思い入れ)を守る権利です。これには、
- 未公表の著作物を公表するかどうかを決める「公表権」
- 著作物に著作者名を表示するかどうかを決める「氏名表示権」
- 著作物の内容や題号を意に反して改変されない「同一性保持権」
が含まれます。
特に注意が必要なのが「同一性保持権」です。セミナー動画の「切り抜き」や「ダイジェスト版」の作成は、講師(著作者)の意図しない編集と見なされ、この権利を侵害する可能性があります。
著作者人格権は、著作者固有の権利(一身専属権)であり、他人に譲渡することはできません。そのため、契約時には「著作者人格権を行使しない」という不行使特約を結ぶのが一般的です。
著作権法が適用される具体例
一つのセミナー動画には、驚くほど多くの「著作物」が詰め込まれています。これら一つひとつに権利者が存在することを認識しなければなりません。
- 講師の講演内容
- その場で話された言葉、アドリブ。(言語の著作物)
- 講師が作成したスライド
- テキスト、図解、グラフ、挿入された写真。(図形の著作物、美術の著作物、写真の著作物)
- 動画のオープニング/エンディング映像
- 制作会社が作ったCGやアニメーション。(美術の著作物、映画の著作物)
- 動画内で使用したBGMや効果音
- 作曲者、演奏者、レコード製作者など(音楽の著作物、著作隣接権)
- セミナー動画そのもの
- 撮影・編集された映像全体。(映画の著作物)
- 参加者によるチャットやQ&A
- 創作的な表現を含む質問やコメント。(言語の著作物)
これらすべてに対し、原則としてそれぞれの著作者(または権利者)の許諾が必要となります。
ライセンスと許諾の仕組み
著作権は、権利者が「独占」している権利です。そのため、他人がこれを利用(コピー、配信、編集など)したい場合は、権利者から「利用許諾(ライセンス)」を得る必要があります。
許諾には「利用方法」「期間」「地域」「媒体」などを細かく定めるのが通常です。例えば、
- アーカイブ配信は許可するが、有料販売は許可しない
- 期間は1年間
- 日本国内限定
- YouTubeでの配信はOKだが、LMS(学習管理システム)への搭載はNG
といった形です。
口約束は「言った、言わない」のトラブルの元です。セミナーを企画する段階で、登壇者や素材提供者とは必ず「契約書」や「許諾書」といった書面(電子契約含む)を取り交わし、誰が何(著作権)を保持し、誰に何をどこまで許可するのかを明確に定義しなくてはなりません。
著作権侵害が及ぼす影響とリスク
万が一、許諾を得ずにセミナー動画を公開・販売し、著作権侵害を犯してしまった場合、企業は深刻なリスクを負うことになります。
民事上の請求
権利者から、以下の請求を受ける可能性があります。
- 差止請求
- 動画の公開停止、削除、アーカイブデータの廃棄など。
- 損害賠償請求
- 権利者が被った損害(例:本来得られるはずだったライセンス料)の賠償。
- 不当利得返還請求
- 侵害によって得た利益(例:有料セミナーの売上)の返還。
- 名誉回復等の措置
- 謝罪広告の掲載など。
刑事罰
著作権侵害は犯罪であり、刑事罰の対象ともなります。
著作権(財産権)の侵害は「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金(又はその両方)」という非常に重い罰則が定められています。法人が侵害した場合は、さらに「3億円以下の罰金」が課される可能性もあります。
企業のレピュテーション(信用)失墜は計り知れません。「知らなかった」では済まされないのが、著作権の恐ろしさです。
セミナー動画制作時の事例と問題点
実務で起こりがちな「ヒヤリハット」事例を見てみましょう。
- 事例1
- 外部講師のスライドの「孫引き」 外部講師のスライドに、有名な研究論文のグラフが使われていました。
- 講師は「研究目的の引用だからOK」と判断していましたが、それを企業がマーケティング目的(商用)のウェビナーで二次利用(配信)した場合、「引用」の要件を満たさず、論文著者の著作権(複製権・公衆送信権)を侵害する可能性があります。
- 事例2
- 「フリー音源」の罠 動画編集担当者が「フリーBGM」と検索して見つけた音源を使用しました。
- しかし、そのサイトの利用規約をよく読むと「商用利用不可」の記載が。
- これに気づかず有料アーカイブとして販売してしまい、BGMの権利者から高額な使用料を請求されました。
- 事例3
- 参加者の「顔」と「声」 Q&Aセッションで、質問した参加者の顔と氏名がZoomの画面録画にハッキリと映り込んでいました。
- これをそのままアーカイブ配信したところ、該当の参加者から「無断で顔と名前を公開された」とクレームが入りました。
- これは著作権ではなく「肖像権」および「プライバシー権」の侵害にあたります。
- 事例4
- チャットログの公開 セミナー中、参加者から活発なチャットが寄せられました。
- これを「有益な情報だから」と、アーカイブ動画の概要欄や関連資料としてテキスト化し公開。
- しかし、チャットには個人の見解や、特定の個人が識別できる情報が含まれており、これも「プライバシー権」や、内容によっては「著作権(言語の著作物)」の侵害、さらには「個人情報保護法」への抵触リスクをはらみます。
このように、セミナー動画には著作権だけでなく、肖像権、プライバシー権、個人情報保護、さらにはスライド内のロゴ(商標権)など、横断的な権利が複雑に絡み合っているのです。
注意すべき著作権のポイント
セミナー動画の制作現場では、「これくらい大丈夫だろう」という安易な判断が命取りになります。特に、スライド内の素材、BGM、そして「引用」の扱いはトラブルの温床です。
ここでは、担当者が最も見落としがちな著作権の「落とし穴」と、その具体的な判断基準を、実務に即して深掘りします。
第三者の映像や音楽の使用について
セミナーのクオリティを上げるため、BGMや効果音、スライド内のイメージ写真や動画(ストック素材)を使いたい場面は多いでしょう。このとき、「フリー素材」という言葉に安易に飛びついてはいけません。
「フリー」とは、「何をしても自由」という意味ではなく、「特定の条件下で無料で使ってよい」という意味合いがほとんどです。以下の点を確認する癖をつけましょう。
- 商用利用は可能か?
- リード獲得目的のウェビナーや、有料販売するアーカイブ動画は、明確な「商用利用」です。
- 「非営利」限定の素材は絶対に使えません。
- クレジット表記は必要か?
- 「利用OK、ただし出典元を明記すること」という条件(例:クリエイティブ・コモンズの「BY(表示)」)が課されている場合があります。
- 動画の最後や概要欄に、指定通りのクレジットを記載する必要があります。
- 改変(編集)は可能か?
- 写真のトリミングや色変更、BGMのフェードアウト処理などが「改変」にあたる場合があります。
- 「改変禁止」の素材は、オリジナル(原形)のまま使用しなくてはなりません。
特に音楽(BGM)は、JASRAC(日本音楽著作権協会)などの著作権管理団体が厳しく管理している領域です。YouTubeにアップロードした際、BGMが原因でContent ID(自動検出システム)に引っかかり、動画がミュートされたり、広告収益が権利者に渡ったり、最悪の場合はアカウントが停止(BAN)されたりするリスクがあります。
安全策は、商用利用ライセンスが明確な有料のストックサービスを利用し、そのライセンス規約の範囲内で使用することです。
引用のルールと注意点
スライド作成時に、他者の論文、書籍、Web記事、統計データなどを利用することは頻繁にあります。これを「引用」として正しく処理できていないケースが非常に多く見られます。
著作権法第32条では、一定の条件を満たせば、権利者の許諾なしに著作物を利用できる「引用」を認めています。しかし、その条件は厳格です。
- 公表された著作物であること。
- 公正な慣行に合致すること。(例:報道、批評、研究など)
- 引用の目的上、正当な範囲内であること。
- 引用部分が明確に区分されていること。(例:「」で括る、ブロッククオートにする)
- 引用する側(自社のスライド)が「主」、引用される側(他者の図表)が「従」の関係であること。
- 出所(出典)を明示すること。
実務上、最も問題となるのが「5. 主従関係」です。 悪い例は、スライドのほぼ全面に他人のグラフを貼り付け、講師が「ご覧の通りです」と説明するだけ、といったケースです。これは引用ではなく、単なる「転載(複製)」です。この場合、グラフの権利者の許諾が必須となります。
良い例は、自社の見解を述べるために必要最小限のグラフを(例えば全体の1/4程度のサイズで)掲載し、そのグラフを分析・批評するコメントをスライドの大部分を占めて記載する、といった形です。
セミナー動画(特に商用)において、他者の著作物を安易に「引用」としてスライドに貼り付ける行為は、極めてハイリスクな行為であると認識してください。
インターネットでの配信と著作権
セミナー動画を制作する最終目的は、多くの場合「配信」です。この配信行為が、著作権の中でも特に強力な「公衆送信権(自動公衆送信における送信可能化権を含む)」に関わります。
これは、インターネットを通じて不特定の(または特定の多数の)人々がアクセスできる状態に置く権利であり、権利者が専有しています。
- YouTubeでの一般公開
- 不特定多数への公衆送信。当然、許諾が必要です。
- 限定公開(Unlisted)
- URLを知っている人だけが見られる状態ですが、これも「特定多数」への公衆送信にあたり、許諾が必要です。
- 社内LMSでの配信
- 社員限定であっても、法的には「特定多数」への公衆送信とみなされます。許諾が必要です。
- 海外配信
- 著作権の扱いは国によって異なります(例:米国の「フェアユース」は日本の「引用」より範囲が広い)。
- しかし、ベルヌ条約により、多くの国で著作権は相互保護されています。
- 日本国内の登壇者の権利は、海外で配信しても保護されます。
結論として、どのような形態であれ、収録した動画を他者(自分以外)が視聴できる状態にする行為は、例外なく「公衆送信権」の対象となり、講師、BGM権利者、素材権利者など、すべての関係者の許諾が必要となります。
著作権侵害を避けるための対策

リスクを理解した上で、次に行うべきは具体的な「防衛策」です。トラブルを未然に防ぐには、制作フローに権利処理を組み込む必要があります。
ここでは、安全にコンテンツを利活用するためのライセンス管理、権利者とのコミュニケーション、そして契約という「盾」の準備について解説します。
ライセンスコンテンツの利用方法
最も安全かつ効率的な方法は、権利処理が明確な「ライセンスコンテンツ(ストック素材)」を利用することです。
- 写真・イラスト・動画素材
- 利用する際は必ず「ライセンスの種類」を確認します。
- 通常ライセンスでは利用範囲(例:印刷部数、Web表示回数)に制限がある場合があります。有料販売や大規模なプロモーションに使う場合は、「拡張ライセンス」が必要か確認しましょう。
- 音楽・BGM・効果音
- これらはサブスクリプション型が多く、契約期間中にダウンロードした素材は、解約後も永続的に利用可能なのか、それとも契約期間中の制作物に限られるのか、規約を精読する必要があります。
- フォント
- フォントにも著作権(書体デザインそのものではなく、フォント「ファイル」)や利用規約があります。
- 動画に埋め込んで配信する場合、「商用利用可」「埋め込み可」のライセンスが必要です。Adobe Fontsや、モリサワのライセンス製品など、利用範囲が明確なものを選びましょう。
権利者への適切な問い合わせ方法
ストック素材で代替できず、どうしても特定の論文の図表や、他社のロゴ、専門家の写真などを使いたい場合は、権利者に直接コンタクトし、許諾を得るしかありません。
- 誰に?
- 著作者本人、出版社、学会、企業の広報・法務部など、権利を管理している窓口を探します。
- 何を?
- 許諾を得たい内容を具体的に書面にまとめます。以下の要素は必須です。
- 利用者
- 自社の会社名、担当部署
- 利用したい著作物
- 書籍名、ページ数、図表番号、WebサイトのURLなど
- 利用目的
- 例:「〇〇(セミナー名)のアーカイブ動画内でのスライド資料として」
- 利用形態
- ストリーミング配信、ダウンロード販売、LMS搭載など
- 利用範囲
- 社内限定、一般公開、有料会員限定など
- 利用期間
- 例:「2026年3月31日まで」「永続」
- 利用者
- 許諾を得たい内容を具体的に書面にまとめます。以下の要素は必須です。
メールでも構いませんが、必ず「許諾する」という明確な返答を書面(記録)として残すことが重要です。使用料が発生する場合は、その見積もりと支払い手続きも進めます。
クリエイティブ・コモンズの活用
クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスは、著作者が「この条件を守れば、私の作品を自由に使って構いません」という意思表示をするための仕組みです。これは便利な選択肢ですが、記号の意味を正確に理解する必要があります。
- BY(表示)
- 原作者のクレジット(氏名、作品名など)を表示すれば利用OK。
- NC(非営利)
- 非営利目的でのみ利用OK。商用セミナーでは使えません。
- ND(改変禁止)
- 元の作品を改変(トリミング、編集)しなければ利用OK。
- SA(継承)
- その作品を改変して二次創作物を作った場合、その二次創作物にも同じCCライセンスを付けなければならない。
セミナー動画で最も使いやすいのは「CC BY」ですが、「CC BY-NC」や「CC BY-ND」も多いため、特に「NC(非営利)」のマークがないか、細心の注意を払ってください。
自作コンテンツの保護方法
逆に、自社が開催したオリジナルセミナー(自社社員が講師)の動画は、自社が(または社員が)著作権を持つ重要な「資産」です。これを他社に無断でコピーされたり、転載されたりしないよう、保護する措置も必要です。
- 著作権表示(クレジット)
- 動画の冒頭や末尾、あるいは画面の隅に常に「© 2025 [Your Company Name] All Rights Reserved.」といったコピーライト表記(©マーク)を明記します。
- ウォーターマーク(透かし)
- 動画全体に、自社のロゴなどを薄く表示させ、不正な切り抜きやコピーを牽制します。
- 配信プラットフォームの選定
- 単純なMP4ファイルでの配布は避け、DRM(デジタル著作権管理)機能や、ドメイン指定(特定のWebサイト以外での再生を禁止)、パスワード保護、ダウンロード禁止設定ができるプラットフォームを利用します。
専門家に相談する重要性
権利処理は非常に専門的かつ複雑です。特に以下のケースでは、自社判断で進めるのは危険です。
- 登壇者との契約書を作成する時
- 著作権の帰属(譲渡してもらうのか、許諾にとどめるのか)、二次利用(有料販売、切り抜き)の範囲、肖像権の許諾、著作者人格権の不行使特約など、法的に有効な契約書の雛形が必要です。
- 共催セミナーやスポンサーが関わる時
- 複数の企業が関わる場合、誰が動画の著作権を持ち、誰がどこまで利用して良いのか、権利関係が複雑化します。
- 海外の登壇者や、海外での配信が絡む時
- 準拠法(どこの国の法律で判断するか)や、ライセンスの範囲を明確にする必要があります。
- 高額な有料コンテンツとして販売する時
- ビジネス規模が大きくなるほど、侵害時の損害賠償額も跳ね上がります。
これらの場合は、時間と費用を惜しまず、著作権やIT法務に強い弁護士や弁理士に相談し、契約書のレビューや、事業スキーム全体のリスクチェックを依頼することを強く推奨します。
著作権トラブルへの対応方法

万全の対策を講じても、ミスや見解の相違からトラブルが発生することはあり得ます。問題は、その「発火後」の初動です。パニックにならず、冷静かつ誠実に対応することが、被害を最小限に食い止める鍵となります。
著作権侵害指摘を受けた場合
ある日、権利者を名乗る人物やその代理人弁護士から、メールや「警告書」といった書面が届いた場合、絶対に無視してはいけません。
- 即時、事実確認と内部共有
- まずは、指摘された動画(例:YouTubeの該当URL、タイムスタンプ)を確認し、侵害の事実に心当たりがあるか(例:スライドのあの図表か? BGMか?)を制作担当者、法務部と迅速に共有します。
- (可能であれば)一時的な非公開措置
- 訴訟リスクを避けるため、事実確認が完了するまでの「一時的措置」として、該当の動画をいったん非公開(または限定公開)に設定します。
- 誠実な初期対応
- 相手方に対し、「ご連絡ありがとうございます。
- 現在、ご指摘の点について社内で事実確認を進めております。
- 確認が取れ次第、〇月〇日を目処に改めてご連絡いたします」といった、誠実な一次回答を(なるべく早く)返信します。
- ここで感情的になったり、安易に非を認めたり、逆に反論したりしてはいけません。
- 要求内容の確認
- 相手が何を求めているのか(動画の完全削除か、該当部分の修正か、クレジットの追記か、金銭(使用料・賠償金)の支払いか)を冷静に分析します。
著作権訴訟の準備と対応
相手が最初から訴訟を提起してきた場合、あるいは交渉が決裂し訴状が届いた場合は、もはや社内だけで対応できるフェーズではありません。
- 即時、弁護士に相談
- 顧問弁護士、もしいなければ著作権問題に強い弁護士に直ちに連絡し、訴状とこれまでの経緯、関連資料(セミナーの企画書、講師との契約書、使用素材のリストなど)をすべて開示し、対応を依頼します。
- 証拠保全
- 侵害したとされる動画ファイル、編集前の元データ、担当者間のメール、権利者とのやり取りなど、関連するあらゆる証拠を保全します。
- 不利な証拠であっても隠蔽や削除は絶対にしてはいけません(証拠隠滅として、さらに不利な状況を招きます)。
- 社内対応窓口の一本化
- 社内が混乱しないよう、法務部や任命された担当者、依頼した弁護士以外は、本件について外部(メディア含む)に一切コメントしないよう、厳格に情報統制を敷きます。
和解交渉の進め方
ほとんどの著作権トラブルは、訴訟(裁判)に至る前の「和解交渉(示談)」で解決が図られます。訴訟は、双方にとって時間的・金銭的コストが膨大にかかるためです。
- 侵害の事実を認める場合:
- 速やかに非を認め、謝罪します。
- その上で、相手の要求(例:損害賠償額)が妥当かを弁護士と検討し、減額交渉や、今後のライセンス契約の締結(侵害を追認してもらい、使用料を支払う形)などを提案します。
- 侵害の事実に疑義がある場合
- 例えば、「これは正当な『引用』の範囲内である」「許諾は取れているはずだ」といった主張がある場合は、弁護士を通じてその法的根拠を提示し、反論します。
- 和解書の締結
- 交渉がまとまったら、「和解金として〇〇円を支払う」「本件について、当事者双方は今後一切の民事上・刑事上の請求を行わない(清算条項)」といった内容を明記した「和解契約書」を双方で取り交わし、解決とします。
コンテンツ削除と修正の手順
権利者からの要求が「削除」または「修正」であった場合、迅速かつ確実に対応する必要があります。
- 完全削除
- 配信しているすべてのプラットフォームから該当コンテンツを削除します。
- 該当部分のカット
- YouTube Studioなどの編集機能には、アップロード済みの動画の特定区間をカットする機能があります。
- 侵害箇所が明確な場合(例:特定のBGMが流れる30秒間)、この機能で対応できる場合があります。
- 素材の差し替え
- Vimeoなど一部のプラットフォームでは、URLを変更せずに動画ファイル自体を差し替える機能があります。
- 問題の図表を削除・修正したスライドに差し替えたバージョンを再アップロードします。
- クレジットの追記
- 権利侵害が「クレジット表記漏れ」だった場合、動画の概要欄や説明文に、指定されたクレジットを追記し、権利者の確認を得ます。
いずれの場合も、対応が完了したら「ご指摘に基づき、〇月〇日〇時、該当箇所の修正(または削除)を完了いたしました」と、証拠(スクリーンショットなど)を添えて相手方に報告します。
専門家による被害軽減策
トラブルが発生してしまった際、専門家(弁護士)は、単に訴訟の代理人となるだけではありません。
- 法的リスクの正確な評価
- 相手の主張が法的に妥当か、要求額は相場と比べて高すぎないか、こちらに反論できる要素(例:引用としての正当性)はないか、を冷静に分析します。
- 交渉の代理(緩衝材)
- 感情的になりがちな当事者同士の直接交渉を避け、弁護士が「代理人」として冷静に法的主張と交渉を行うことで、無用な対立を避け、合理的な和解(着地点)を模索します。
- 再発防止策の策定支援
- 今回のトラブルの原因を分析し、「講師契約書の雛形見直し」「スライドの権利チェックリストの導入」「社内研修の実施」など、二度と同じ過ちを繰り返さないための具体的な再発防止策の策定をサポートします。
著作権トラブルは、企業の信用と資産に直結する経営リスクです。「たかがセミナー動画」と侮らず、制作の初期段階から専門家と連携し、クリーンな権利処理フローを構築することが、結果として最大のコスト削減とリスクヘッジにつながるのです。
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