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特別教育とは?技能講習との違いや実施方法ついて解説

本記事では、労働安全衛生法で定められている「特別教育」について解説します。
建設業や製造業などで、危険で有害な業務に従事する場合に受けなければならない教育です。

特別教育が必要な業務についてや、特別教育と合わせて目にすることのある「免許」「技能講習」との違いについて、特別教育の実施方法など、管理者側の視点から必要な情報をお伝えします。

特別教育とは?

特別教育とは、特定の危険で有害な業務を行う際に必要な専門的な教育のことです。
学科教育と実技教育があり、対象の業務は労働安全衛生法で定められています。
企業が従業員に対して特定の危険で有害な業務に従事させる場合に、特別教育の実施が義務付けられています。

特別教育が必要な作業

特別教育が必要な業務は、労働安全衛生規則第36条「特別教育を必要とする業務」で規定されています。
例えば、以下のような業務があります。

  • アーク溶接機を用いて行う金属溶接
  • フォークリフトやショベルローダーの運転
  • 小型ボイラーの取り扱い業務
  • 産業用ロボットの調整や操作
  • ロープ高所作業にかかる業務
  • 足場の組立・解体の作業にかかる業務

特別教育は労働災害を防止するための教育です。
操作ミスや知識不足により大きな事故につながる危険性がある業務を対象としています。

特別教育が必要な業務一覧の詳細は以下をご覧ください。
https://www.jisha.or.jp/campaign/kyoiku/pdf/kyoiku01.pdf
[出典:中央労働災害防止協会より]

免許・技能講習との違い

特別教育以外に、「免許」の取得や「技能講習」の受講が必要な業務があります。
作業の危険度に合わせてより専門的なスキルが求められるためです。

免許>技能講習>特別教育の順に、求められる専門性が高く対応できる業務範囲が広くなります。
ですので、特別教育より上位の資格(免許・技能講習)をすでに持っていれば、特別教育の受講を免除できます。

クレーンの運転業務を例に挙げると、荷重の大きさによって求められる資格や教育が異なります。
つり上げ荷重5トン以上であれば、「移動式クレーン運転士免許」が必要です。
1トン以上5トン未満であれば「小型移動式クレーン運転技能講習」の受講が求められます。

また特別教育と技能講習の大きな違いは、修了証の交付有無です。
技能講習の場合は、修了試験に合格し「技能講習修了証」の交付がされなければ、特定の業務に従事できません。
特別教育は法的な試験はなく、安全衛生特別教育規程に沿ったカリキュラムを受講すれば、業務を行うことができます。

特別教育・免許・技能講習の違いを表にまとめました。

作業の危険性・難易度 資格・教育 例:クレーンの運転業務 主な違い
免許 つり上げ荷重5t以上の移動式クレーン(移動式クレーン運転士免許) ・国家試験を受験
・免許証を交付
技能講習 つり上げ荷重1t以上5t未満の移動式クレーン(小型移動式クレーン運転技能講習) ・講習と修了試験を受ける
・合格者に技能講習修了証を交付
特別教育 つり上げ荷重1t未満の移動式クレーン ・法的な試験はない

特別教育の実施方法

特別教育は、外部の講習を受講する方法と社内で実施する方法があります。
それぞれについてメリットやデメリットを踏まえながら解説します。

1. 外部機関を利用して受講する

一般社団法人や教習所運営企業などが特別教育を実施しています。
例えば「クレーン車 特別教育」などと検索すれば、特別教育を実施しているサイトが見つかりますので、自社に合ったものを選択してください。

メリット・デメリット

外部機関を利用するメリットは、特別教育を実施するために必要な講師の手配や講義の準備が不要であることです。
人手不足などを理由に社内で実施する時間が取れない場合は外部機関の利用がおすすめです。

一方で注意点は、従業員は所定労働時間内に講習を受講しなければならない点です。
特別教育は事業者が労働者に対して実施するものと定められているためです。
また講習費用や交通費なども会社が負担しなければなりません。

2. 社内で特別教育を実施する

社内で特別教育を実施することもできます。
具体的な教育内容は、安全衛生特別教育規程において科目や時間が定められています。

クレーンの運転業務で必要な科目や時間の例は以下の通りです。

科目 範囲 時間
クレーンに関する知識 種類及び型式 主要構造部分 作動装置 安全装置 ブレーキ機能 取扱い方法 三時間
原動機及び電気に関する知識 電気に関する基礎知識 電動機 開閉器、コントローラー等電気を通ずる機械器具 電路の点検及び補修 感電による危険性 三時間
クレーンの運転のために必要な力学に関する知識 力(合成、分解、つり合い及びモーメント) 重心 荷重 ワイヤロープ、フツク及びつり具の強さ ワイヤロープの掛け方と荷重との関係 二時間
関係法令 労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則及びクレーン則中の関係条項 一時間

https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-16/hor1-16-3-1-0.htm
[出典:中央労働災害防止協会より]

メリット・デメリット

社内で特別教育を実施するメリットは、講習の費用削減や移動時間の短縮などです。
受講対象となる従業員の人数や、講習会場までの距離などに課題がある場合は、社内実施を検討すると良いでしょう。
また特別教育のカリキュラムに、自社独自の内容を追加できる点や、社内の事例などを紹介できる点もメリットと言えます。

注意点としては、教育科目について十分な知識と経験を持った担当者が、講師役を務める必要があることです。
特別教育を行うための資格や要件はありませんが、規程に定められている内容を漏れなく教育できる人選が必要です。

安全衛生特別教育規程は以下をご覧ください。
http://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-16/hor1-16-1-1-0.htm
[出典:中央労働災害防止協会より]

特別教育の実施記録と保存方法

特別教育を実施後、受講日時や受講者名、科目などについて記録し、3年間保管しなければなりません。
労働安全衛生規則第38条で定められています。

特別教育の記録の保存

第三十八条 事業者は、特別教育を行つたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを三年間保存しておかなければならない。

修了証の発行は義務付けられていませんが、外部機関を利用する場合は交付されることがあります。
社内で特別教育を実施する場合は、実施記録のみの保管で問題ありません。

まとめ

本記事では特別教育とは何か、技能講習や免許との違い、特別教育の実施方法などを解説しました。

特別教育とは労働安全衛生法で定められている特定の危険で有害な業務に従事する場合に必要な教育です。
労働災害を防ぐ目的で、安全に業務に取り組めるように必要な知識やスキルを習得します。

また特別教育は、外部機関を利用する方法と社内で実施する方法があります。
会社の規模や人的リソース、コストなどを考慮して、どちらにするか選定するとよいでしょう。

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