日本では企業が社外に対して教育活動を行うための学習管理システム(EE-LMS: 拡張エンタープライズ学習管理システム)はまだ発展段階ですが、USでは多くの企業が社外向けの教育に取り組んでいます。
この記事では、Brandon Hall Group の調査レポート「Extended Enterprise Learning: Generating Revenue and Adding Value」から、EE-LMSを使って売上増加を実現している企業の実態をご紹介します。
- 今や学習対象者の半数以上は「社外」の人
- 学習関連予算の半分以上が社外向けの教育に当てられている
- 40%の企業が学習コンテンツで稼いでいる!?
- eラーニングのシステム利用料は社外販売の売上で賄っている!?
- 56%の企業が社外向け教育は効果的と言っている
- 社外向け学習にLMSを用いる会社が76%
- EE-LMSで重要視される機能をピックアップ
- まとめ
今や学習対象者の半数以上は「社外」の人
会社が提供する学習機会というのは、一般的にはその会社の本社に勤める従業員が対象と思われるかもしれません。しかし、この調査ではなんと学びの提供先の半数以上である54%が社外のユーザーであることが判明しました。
その中にはリモートで働く社外の従業員はもちろんのこと、顧客、チャネルパートナー、ディストリビューター、代理店、フランチャイズなどの「非」従業員が26%を占めていました。
学習関連予算の半分以上が社外向けの教育に当てられている
組織における教育予算の半分以上を社外向けの教育に当てていると回答した企業が、全体の20%以上を占めていることがわかりました。
社外の営業メンバーや顧客教育などに多くの教育予算が割り当てられています。
社内の人材育成ももちろん重要ですが、組織の枠にとらわれず、社外のステークホルダーに教育予算を投資する企業も今後ますます増加すると考えられます。
40%の企業が学習コンテンツで稼いでいる!?
一般的に組織内の研修や教育に対する投資は、コストと見られがちです。
しかし、社内の営業ノウハウや製品知識を「販売可能なコンテンツ」と捉えれば、それらを社外に有償で販売し、収益源とすることができます。
そんなことしている会社あるの?と思われるかもしれませんが、なんとこの米国の調査では40%の企業が学習コンテンツを社外に販売し、収益源としているという結果が得られています。
例えばカスタマーサポートツールを提供するZendeskはZendeskの使い方の習熟度を測る認定試験を有償で販売しています。
また、代理店制度などとのパッケージで有償のトレーニングプログラムを提供している企業もあります。
国内でも企業のブランディングの一環として、研修プログラムを社外向けに提供したり、書籍の形でノウハウをまとめて出版するケースが見られます。
今後は、組織の垣根を超えた、ナレッジやノウハウの移管が進み、一部の企業は収益源としてコンテンツの販売が加速すると予測されます。
eラーニングのシステム利用料は社外販売の売上で賄っている!?
言わずもがな、LMSの運用には費用がかかります。
コストセンターと見られがちな教育活動ですが、社外向けに学習コンテンツを販売することができれば、その収益でeラーニングシステムの費用を賄うことだってできます。
この調査結果では、なんと30%の企業がLMSの運用費の半分以上を学習コンテンツの売上で賄っていると回答しています。
社外の人に学びを届けることは、直接的な売上の増加につながるようです。
56%の企業が社外向け教育は効果的と言っている
いわゆる社内向けのeラーニングに対して、効果的だと回答した企業は43%と半分以下だったのに対し、社外向けの教育の効果については、半数以上の56%の企業が、とても効果があった、または効果があったと回答しています。
社内向けのe-ラーニングはなかなかその成果がわかりにくいため、効果があったかどうかの判定も難しい場合が多いですが、社外向けの場合、代理店教育であれば売上向上、顧客向けトレーニングであれば、操作方法に関する問い合わせ数の減少など、測定しやすい数値が得やすいことが、効果が高いと回答する人の増加に影響しているのかもしれません。
社外向け学習にLMSを用いる会社が76%
社外に学びを提供するために、どのような提供手法があるでしょうか。YouTubeチャンネルを使ったり、Facebookグループを開設したり、といった比較的誰でもアクセスできるような環境を構築する手法もありますが、一番多いのはLMSを活用するケースです。
どのような方法で社外に学習コンテンツを提供していますか?という質問に対して、76%の企業がLMSを使っていると回答しています。
動画や文書を並べたシンプルなWebページより、受講履歴などをトラッキングできるeラーニングのシステムを用いて、効果を測定している企業が多いと考えられます。
EE-LMSで重要視される機能をピックアップ
社外向けの教育でシステムを活用する場合に、重要視する機能についても調査結果がまとめられています。
1位から順に以下の機能が挙げられています。
- レポート・分析機能
- スマホ対応
- テスト・試験機能
- クラウドベースであること
- エンドユーザーのタイプに応じて、複数のポータルを構築できる機能
- ソーシャル関連機能
- 講座をオフライン(通信環境なし)でも閲覧できる機能
- EC機能(決済など)
組織の中よりも状況を把握しづらい組織の外で何が起こっているのかを把握するため、レポートや分析機能は重要視されています。
また、営業関連のステークホルダーがEE-LMSにアクセスする場合、外出先ですぐに環境にアクセスするために、スマホ対応やクラウドベースであることは必須と言えるでしょう。
ユニークなのが、複数ポータルの構築が可能かどうかという機能で、社外のさまざまなステークホルダーが利用するケースを想定して、1環境ですべてのタイプのエンドユーザーをまかなうようなシステムではなく、タイプごとに複数環境が構築でき、それぞれの環境ごとにブランドや体験、提供講座を変えられるシステムが必要なようです。
また、学習コンテンツを社外に販売するためにEC機能も重要な機能として挙げられています。
まとめ
この調査レポートから、単に従業員だけに学びのコンテンツを提供するのではなく、代理店や製造元、顧客やその他関係するステークホルダー向けに学びのコンテンツを届けることの重要性を認識している企業の数はますます増えていることがわかりました。
社内のナレッジやノウハウをコンテンツ化して、社外に販売し、収益を得ている企業の数も増えており、組織における学びのエコシステムは、社内研修に留まらず、想像よりも遥かに大きいものと考えるのがいいのかもしれません。
WisdomBaseは、この調査レポートでEE-LMSで重要視される機能と回答されたすべての機能を網羅したシステムです。
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