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職長教育のeラーニング化|通達が定める要件と自社実施の手順

職長教育のeラーニング化|通達が定める要件と自社実施の手順

職長教育のeラーニング化|通達が定める要件と自社実施の手順

建設業や食料品製造業で新しく班長・ライン長に任命した社員に、法定の職長教育を受けさせなければなりません。外部の講習会場を予約すれば1人あたり丸1日近く現場から抜け、対象者が10人いれば日程調整だけで一苦労になります。厚生労働省は令和3年、この教育をeラーニングで実施してよいとする通達を出していますが、特別教育とは異なる要件が職長教育には課されており、同じやり方で進めると要件を満たせません。本記事では通達が定める要件と、自社で実施する手順を整理します。

【この記事の概要】

  • 職長教育(労働安全衛生法第60条)はeラーニングで実施できるが、通達(令和3年1月25日 基安安発0125第2号)は特別教育とは異なる要件を課している。実技要件はない代わりに「15人以内で一単位」「討議方式は双方向性の確保」が必須
  • 受講した事実と教育時間の担保は、リアルタイム監視・動画の再生記録やパソコンの操作記録・その他合理的な証明方法のいずれかで行う(同通達 別表備考)
  • 令和5年4月1日から食料品製造業(うま味調味料製造業・動植物油脂製造業を除く)と新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業が対象業種に追加されている

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目次

職長教育とは|対象業種・対象者・教育時間(労働安全衛生法第60条)

職長教育とは|対象業種・対象者・教育時間

職長教育は、労働安全衛生法第60条が特定の業種の事業者に義務づける教育です。対象になる業種、教育を受けるべき「職長等」の範囲、最低限確保すべき教育時間を、まず条文と省令から確認します。オンライン化の要件を検討する前に、自社が実施義務を負う立場かどうかをここで確定させておきます。

対象になる業種

労働安全衛生法施行令第19条は、職長教育を行うべき業種を次のとおり定めています。

区分 業種
従来からの対象業種 建設業/製造業(たばこ製造業、繊維工業〈紡績業・染色整理業を除く〉、衣服その他の繊維製品製造業、紙加工品製造業〈セロファン製造業を除く〉を除く)/電気業/ガス業/自動車整備業/機械修理業
令和5年4月1日追加 食料品製造業(うま味調味料製造業及び動植物油脂製造業を除く)/新聞業、出版業、製本業及び印刷物加工業

この追加は「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令」(令和4年政令第51号、令和4年2月24日公布)によるもので、令和5年4月1日に施行されています(出典:e-Gov法令検索の法令改正履歴、2026年9月確認)。自社の業種が製造業に含まれる場合、除外業種に該当しないかをまず確認する必要があります。

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「職長等」に該当するのは誰か

法第60条が対象とするのは「新たに職務につくこととなつた職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く)」です。役職名は問われません。「リーダー」「班長」「ライン長」など呼び方が違っても、現場で作業の指揮・命令を行う立場であれば「職長等」に該当します。

5科目・合計12時間以上

労働安全衛生規則第40条第2項は、教育すべき科目と時間を次のとおり定めています。

科目 時間
作業手順の定め方・労働者の適正な配置の方法 2時間
指導及び教育の方法・作業中における監督及び指示の方法 2.5時間
危険性又は有害性等の調査の方法・調査結果に基づき講ずる措置・設備等の具体的な改善の方法 4時間
異常時における措置・災害発生時における措置 1.5時間
設備及び作業場所の保守管理の方法・労働災害防止についての関心の保持及び創意工夫を引き出す方法 2時間

合計12時間以上が必要です。同条第3項は「前項の表の上欄に掲げる事項の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる者については、当該事項に関する教育を省略することができる」と定めており、経験者について科目単位で省略できる余地も設けています。

職長教育はeラーニングで実施できる|根拠となる通達

職長教育はeラーニングで実施できる|根拠となる通達

職長教育をオンラインで実施できるかどうかは、厚生労働省が発出した通達で示されています。特別教育とは要件が異なる点を押さえていないと、特別教育向けに整えた仕組みをそのまま流用して要件を満たせなくなります。

基安安発0125第2号の基本的な考え方

根拠は「インターネット等を介したeラーニング等により行われる労働安全衛生法に基づく安全衛生教育等の実施について」(令和3年1月25日 基安安発0125第2号・基安労発0125第1号・基安化発0125第1号、厚生労働省、2026年9月確認)です。この通達は同法第59条第3項の特別教育に限らず、職長等の教育を含む「安全衛生教育等」全般を対象にしています。

通達は基本方針として次のように述べています。

eラーニング等により安全衛生教育等を行う場合であっても、法定の科目の範囲、教育時間及び講師の要件を満たした上で、教本等必要な教材を用いて行うとともに、受講者が受講した事実を適切に確認する必要があること

この通達をもって、令和2年3月26日付けの旧通達(基安安発0326第1号、特別教育を対象にしたもの)は廃止されています。

特別教育とはeラーニングの要件が違う

通達の別表は、教育の種類ごとに満たすべき要件を分けて定めています。職長等の教育と特別教育を比べると、要件の中身が異なります。

項目 職長等の教育 特別教育
教育内容 法第60条に定める範囲を満たすこと 各特別教育規程に定める範囲を満たすこと
教育時間の担保 安衛則第40条第2項に定める時間以上であることが担保できること 各特別教育規程に定める時間以上であることが担保できること
講師・教材の作成者・監修者 いずれも十分な知識又は経験を有することが確認できること 同左
実技・修了試験 定めなし 実技教育について、講師と同一場所で対面により実施していること
質問対応 受講者からの質問があった際に受付け回答できる体制があること 同左
人数 15人以内の受講者をもって一単位としていること 定めなし
討議方式の教育 同一時間に参加した受講者の相互のやりとりが可能となるよう双方向性が確保されていること 定めなし

特別教育は実技がある科目について対面実施が必須ですが、その代わり人数や討議に関する定めはありません。職長教育は逆で、実技要件はない代わりに「15人以内で一単位」と「討議方式は双方向性の確保」という職長固有の要件があります。録画教材を配信するだけで討議部分の双方向性を欠くと、この要件を満たしません。

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職長教育をeラーニングにすると現場の何が変わるか

職長教育をeラーニングにすると現場の何が変わるか

要件を満たす前提で切り替えると、教育担当者の負担そのものが変わります。12時間という時間の重さと、受講管理の手間がどう変わるかを整理します。制度上の話だけでなく、現場を預かる担当者が実際に楽になる部分を先に押さえておきます。

12時間を分割して受講でき、現場を止めずに済む

12時間分をまとめて1〜2日で確保する必要がなくなり、日々の隙間時間に分割して受講できます。現場を丸1日抜けさせる調整をしなくて済みます。

受講状況を一覧で把握でき、督促が漏れない

誰がどこまで受講したかが一覧で分かるため、対象者が多いときに、電話やメールで一人ひとりの進捗を追いかける作業が減ります。

講師や教材によって説明の質がばらつかない

同じ動画教材を使う限り、講師の経験や当日の体調によって説明の抜け漏れが生じることがありません。誰が受講しても同じ内容が伝わります。

職長教育をeラーニングで行うときに満たす要件

職長教育をeラーニングで行うときに満たす要件

通達の別表が職長等の教育に定める要件は5点あります。受講した事実と教育時間の担保だけは内容が独立しているため、次の見出しで別に扱います。ここでは教育内容・講師・人数・双方向性という、教材と運営体制を組む段階で満たすべき要件を順に確認します。

教育内容が法第60条に定める範囲を満たすこと

教材が5科目・12時間以上の範囲を網羅しているかを確認します。前章の表2の科目・時間がそのまま基準になります。

講師と教材の作成者・監修者が十分な知識又は経験を有すること

動画に出演する講師だけでなく、教材を作成した者・監修した者についても、十分な知識又は経験を有することが確認できる状態にしておく必要があります。

受講者の質問を受け付けて回答できる体制があること

オンデマンド配信であっても、質問を受け付けて回答する窓口(チャット、メール、質問フォームなど)を用意する必要があります。

15人以内の受講者をもって一単位とすること

一度に討議を行う単位は15人以内に区切ります。人数を超えるときは単位を分けて実施します。

討議方式で行う科目は双方向性を確保すること

「同一時間に参加した受講者の相互のやりとりが可能」であることが必要です。ビデオ会議ツールなどで、参加者どうしが発言し合える状態を作る必要があります。

受講した事実と教育時間をどう担保するか

受講した事実と教育時間をどう担保するか

同通達の別表には、受講事実と教育時間の担保方法として3つの方法が備考として例示されています。いずれかを満たせばよく、3つを同時に行う必要はありません。自社の受講環境に合わせてどれを採用するかを、ここで具体的に決めます。

ビデオ会議ツールでリアルタイムに確認する方法

受講者を1か所に集合させず、ビデオ会議ツール等を用いて、講師がリアルタイムで受講状況を確認しながら教育を行う方法です。

動画の再生記録・操作記録で確認する方法

映像教材やウェブサイト動画の再生記録、パソコンの操作記録等に基づいて、教育を実施する者が受講状況を確認する方法です。

その他、合理的に証明できる方法

上記2つ以外にも、教育時間について教育を実施する者が合理的に証明できる方法であれば認められます。具体的にどこまでが「合理的」と認められるかは事案ごとの判断になるため、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認することをおすすめします。

職長教育を自社で実施するときの手順

職長教育を自社で実施するときの手順

要件を満たしたうえで、実際に自社の教育として組み立てる手順を整理します。外部機関に委託せず、教材の準備から実施、記録の保存までを自社の担当者だけで完結させる場合の進め方です。順番に見ていくと、特別な体制を新たに用意しなくても着手できることが分かります。

講義部分と討議部分を切り分ける

5科目の講義はオンデマンドのeラーニングで進め、討議が必要な科目だけをビデオ会議で15人以内の単位に分けて実施する組み方が現実的です。すべてを同時双方向で行おうとすると、日程調整の負担が減りません。

社内講師を立てるときの考え方

通達は講師に資格の保有を求めておらず、「十分な知識又は経験を有すること」を確認できればよいとしています。自社の安全衛生担当者や、現場経験の長い管理職が講師を務めることも可能です。動画教材を作成・監修する場合も、作成者・監修者について同様の確認が必要です。

教育を省略できる受講者を判断する

安衛則第40条第3項により、科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる受講者は、その科目の教育を省略できます。他部門で職長経験のある異動者などが該当し得ますが、省略の判断は事業者が行います。

修了の記録と修了証の扱い

受講事実の確認方法(前章)で得られる記録は、教育を実施した証拠として保存しておきます。修了証の発行は法令上の義務ではありませんが、発行する場合は前述の通達が触れている電子的な真正性の担保にも留意します。

建設業で「職長・安全衛生責任者教育」として実施する場合

建設業で「職長・安全衛生責任者教育」として実施する場合

建設業では、職長教育と安全衛生責任者教育をあわせて実施する運用が広く行われています。両者は法的な位置づけが異なるため、別の教育として整理します。混同したまま実施計画を立てると、再教育の時期や記録の管理方法を取り違える原因になります。

安全衛生責任者教育は労働安全衛生法上の教育義務ではない

労働安全衛生法第16条が定めているのは、安全衛生責任者を選任し、統括安全衛生責任者との連絡等を行わせる義務であり、安全衛生責任者に対する教育の実施そのものを義務づける条文ではありません。実務では職長教育とあわせて教育する運用が広がっていますが、根拠となる条文が異なる点は区別しておく必要があります。

おおむね5年ごとの再教育

厚生労働省は「建設業における職長等及び安全衛生責任者の能力向上教育に準じた教育について」(平成29年2月20日 基発0220第3号・基安安発0220第1号、厚生労働省、2026年9月確認)で、初任時教育に加えて概ね5年ごと又は機械設備等に大幅な変更があったときに再教育を受けさせるよう求めています。これは行政指導であり、法律上の罰則を伴う義務ではありません。

130分のグループ演習はオンラインで成立するか

上記の再教育カリキュラムにはグループ演習130分が含まれています。オンラインで行う場合も、前述の通達が職長等の教育に定める「15人以内で一単位」「双方向性の確保」という要件を満たす形にする必要があると考えられます。演習の設計や利用するツールの選定は、通達の要件と自社の実施体制を踏まえて事業者が判断する事項です。

職長教育のeラーニングに関するよくある質問

職長教育のeラーニングに関するよくある質問

ここまでの内容と重なる部分もありますが、職長教育のオンライン化を検討する担当者から実際によく聞かれる質問を、通達の該当箇所とあわせて改めてまとめます。細かい制度の理解に不安が残る場合は、この章だけを読んでも要点を確認できるようにしています。

職長教育はオンラインだけで完結できますか?

講義部分(安衛則第40条第2項が定める5科目・合計12時間以上)はeラーニングで実施できます。ただし討議方式で行う科目は、同一時間に参加した受講者どうしが相互にやりとりできる双方向性の確保が要件になっており(令和3年1月25日 基安安発0125第2号 別表)、録画教材を一方的に見せるだけでは要件を満たしません。

職長教育は自社の社員が講師を務めて実施できますか?

できます。通達は講師に「十分な知識又は経験を有すること」を求めていますが、資格保有や外部委託は義務づけていません。事業者が自社の実務経験者を講師として認められると判断すれば、社内実施が可能です。

職長教育は何人まで同時に受講できますか?

通達は「15人以内の受講者をもって一単位としていること」を職長等の教育に固有の要件として定めています。特別教育や雇入れ時教育にはこの人数の定めがなく、職長教育だけの要件です。

職長教育の対象業種はどこまで広がっていますか?

建設業・製造業(一部除外業種あり)・電気業・ガス業・自動車整備業・機械修理業に加え、令和5年4月1日から食料品製造業(うま味調味料製造業・動植物油脂製造業を除く)と新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業が追加されています(労働安全衛生法施行令第19条)。

受講した事実はどのように記録すればよいですか?

通達は、ビデオ会議ツールでの受講状況のリアルタイム確認、動画の再生記録・パソコンの操作記録の保存、その他合理的に証明できる方法のいずれかで、受講の事実と教育時間を担保するよう求めています。記録は労働基準監督署から確認を求められた際に提示できる状態で保存しておく必要があります。

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株式会社シェアウィズが開発・提供するWisdomBaseは、通達が求める「受講した事実の確認」を、動画を見返さずに管理画面から確認できるようにしています。

離席を検知して受講の事実を記録する

WisdomBaseの学習動画は、受講者がカメラの前から離れると自動で再生を停止します。顔の位置が中央から外れたタイミングで動画が止まり、元の位置に戻ると再生を再開します。誰が、どの動画を、いつ離席したかのログがシステムに残るため、通達が求める受講事実の確認を、担当者が動画を見返して判断する作業なしに行えます(2024年5月17日リリースの離席時動画停止機能)。

受講者ごとの進捗を一覧で管理する

受講者ごとの視聴状況が管理画面に一覧で表示されるため、誰がどこまで受講を終えているかを、個別に確認の連絡を入れなくても把握できます。

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まとめ

職長教育は労働安全衛生法第60条が定める教育で、令和3年1月25日の通達によりeラーニングでの実施が認められています。特別教育とは要件が異なり、実技要件はない代わりに「15人以内で一単位」「討議方式の双方向性確保」が固有の要件になっている点が最大の注意点です。受講事実と教育時間の担保、社内講師の考え方、建設業での安全衛生責任者教育との違いを押さえておけば、自社での実施に踏み切れます。本記事の内容は2026年9月時点の法令・通達に基づいています。