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アンラーニング(学習棄却)とは?メリットや実践方法までわかりやすく紹介

アンラーニング(学習棄却)

「アンラーニング(unlearning)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。日本語にすると「学習棄却」。すでに獲得した知識や経験のうち、古くなったものを手放すことを意味します。

変化の激しい時代において、アンラーニングは、個人学習だけでなく組織学習の領域でも注目される概念です。

今回は、アンラーニングとは何かをわかりやすく解説するとともに、メリットや実践方法についても紹介します。

アンラーニングとは?

アンラーニング(学習棄却)を別の言い方にすると「学びほぐし」。これまで獲得してきた知識をいったん棄却して、現状にあった方向へ修正するという意味で使われます。

アンラーニングは、よくダブルループ学習とセットで使われます。ダブルループ学習とは、既存の枠組みや前提を疑うことで新しい考え方を発見し、イノベーションを起こすという学習プロセスのことです。

といっても「横文字ばっかりで全然わからないなぁ」と感じますよね。

アンラーニングは、ただのラーニング(学習)と比較すると理解しやすくなります。

  • ラーニング:”既存の知識の上に、さらに新たな知識を積む”という知識の足し算
  • アンラーニング:”獲得した知識の中で、古くなったもの、アップデートが必要な部分を意識的に白紙にする”という知識の引き算

学生や新人は別として、30代以降のベテラン層になると、若いときの経験や知識が現役で役立つケースは滅多にないでしょう。「このやり方は古いのではないか」「もっと新しい知識が必要なのではないか」と考えながら仕事をする人と、従来のやり方に固執する人では、成長に雲泥の差が出るはずです。

つまり、個人や組織が成長を続けるには、アンラーニングで不要になった知識や経験則を捨て、ラーニングで時代にあった知識や考え方へアップデートするというサイクルを回し続ける必要があるのです。

アンラーニングのメリット

アンラーニングを実践すると、個人レベルでも組織レベルでも以下のようなメリットがあります。

  • 新たな価値観に対応できる
  • 継続的な学びにつながり、イノベーションが活性化される
  • 新しい方法を取り入れやすくなり、業務効率化につながる

とくに成功実績のあるビジネスパーソンや歴史のある組織の場合、既存の価値観に固執し、新しいやり方に否定的になりがちです。しかし、技術の進化やトレンドが目まぐるしく変わる時代において、それまで伝統とされてきた”成功パターン”が通用しないことも珍しくありません。

例えばアンラーニングができずに沈んでいった組織としては、フィルムメーカーのコダックや百貨店のそごうがあげられます。こちらの動画、そごうの経営破綻への過程においても、過去の成功体験への固執が顕著に見られます。

アンラーニングは、個人や組織の持続的な成長を促進するだけでなく、時代に取り残されるリスク回避にもつながるのです。

「学び直し」や「リカレント教育」との違い

アンラーニングと近い意味で使われる言葉に「学び直し」や「リカレント教育(生涯学習)」がありますが、こちらはアンラーニングとは意味合いが違います。リカレント教育や学び直しは、社会人になった後で大学に入り直したり、スキルアップを目指して講座を受けたりすることを指す、まさにラーニングです。

リカレント教育については大企業を中心に導入が進んでいます。具体例は以下の記事で紹介していますので参考にしてください。

アンラーニングを実践するポイント

ではアンラーニングはどのように実践すればよいのでしょうか?アンラーニングに決まった方法はありませんが、ポイントとなるのは次の3つです。

  1. 内省(リフレクション)
  2. 異業種・他部署との交流
  3. 知識や経験の取捨選択

①内省(リフレクション)

まずは個人レベルで自身の知識や経験を整理します。「内省」や「リフレクション」と言われるステップです。

  • 合理的に考えて時代に合わないやり方をしていないか?
  • 常識と思って続けてきたことは、今後も価値があるか?

上記のようなことを自問自答したり、手帳に書き出したりしながら、知識や経験の棚卸しを進めます。

とはいえ、内省は口で言うほど簡単ではありません。努力と時間をかけて獲得した知識・経験を捨てることは、多くの人にとって強いストレスを伴うからです。

特に価値観を捨てることは非常に難しく、1人で行うには限界があります。そこで、よりおすすめなのが次の「交流」です。

②他部署や異業種との交流

異なる部署や異業種、幅広い年代の人と交流する場に参加すると、新しい価値観に触れられてアンラーニングが進みやすくなります。社内でなかなか他の部署と交流する機会がない場合は、ビジネス交流会や内省を促すワークショップなど外部イベントへの参加もおすすめです。

とくに普段は知り合えない業種の人と交流すると、「こんな考え方があるのか」と大きな刺激になります。他社との交流を通じて自分自身を客観的に見ることで、捨てるべきものと、新たに取り入れるべきものがより見えやすくなるでしょう。

③知識や経験の取捨選択

内省や他者との交流を経て、残すべきものとアップデートすべきものを取捨選択します。といっても、アンラーニングするからといって、これまでの知識や経験がすべて無駄になってしまうことは滅多にないでしょう。

例えば、今の30代以降が義務教育で学んだ歴史の知識には、もう古いものが多々あります。しかし、歴史の大きな流れや偉人の名前といった知識は使えるはずですし、そのような前知識があった方が新しい歴史を学ぶ上でも有利でしょう。

アンラーニングで重要なのは、その後のラーニングにつなげること。アンラーニングによって視野が広がり、自然に「もっと新しい価値観を知りたい」と好奇心が喚起される状態が理想的なのです。

アンラーニングの注意点

ベテラン層が学習を続ける上で必須とも言えるアンラーニングですが、注意点もあります。

反省や後悔と混同しない

経験や知識の新旧を選り分けていくと、つい過去の失敗を後悔したり、「この学習は無駄だったな」とネガティブになったりしてしまうものです。

しかし、アンラーニングで行う内省は、客観的に自分を見つめ直すことでもあります。失敗の原因を探る反省や、古傷を掘り返す後悔とは根本的に違います。過去の失敗経験であっても、それが今の時代に使える経験ならアンラーニングする必要はないわけです。

反省や後悔と意識して区別するようにしましょう。

ラーニング否定に陥らないようにする

知識を捨てることに意識がいくと、知識を吸収するラーニングに抵抗感が生まれやすくなります。つい「それを学習して意味があるのか?」と考えたくなりますが、ラーニングしたものが役立つかどうかは実際に行動してみないとわかりません。

自己成長にはアンラーニングだけでなく、ラーニングも必要不可欠です。ラーニング自体を否定する思考にならないようにしましょう。

組織単位でのアンラーニングはトップダウンで行う

アンラーニングは、個人で行うより組織のほうが難しくなります。個人レベルでアンラーニングを促進しても、チームや部署のやり方まで変革するのは非常に困難ですよね。

よって、組織単位でアンラーニングを考えるなら、トップダウンで行う必要があるわけです。

例えば、フィルムメーカーからのイノベーションに成功した富士フイルムは、トップダウンでのアンラーニングの好例です。

日本で学習や研修というと若手の育成をイメージしがちですが、アンラーニングに関しては、組織の意思決定権を握っているシニア層やミドル層にこそ必要な概念といえますね。

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