
SaaSビジネスでは、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客に継続して利用してもらうことが事業成長の鍵を握ります。
解約(チャーン)が増えると、売上の安定性が損なわれるだけでなく、マーケティングや営業コストも無駄になりかねません。そこで注目されているのが、顧客の利用定着と価値実感を支援する「顧客教育」です。
本記事では、SaaSにおける解約防止の考え方と、顧客教育が果たす役割を整理します。
【この記事の概要】
- 解約が増えてしまう理由と、その背景を整理できる
- 自社で何から取り組むべきかの方向性が見えてくる
- 顧客教育を使った解約防止の考え方が分かる
- SaaSのチャーン(解約)とは?基本的な考え方
- SaaSで解約(チャーン)が発生する主な原因
- SaaSの解約防止に有効な代表的な施策
- 顧客教育(カスタマートレーニング)とは?
- なぜ顧客教育がSaaS解約防止に効果的なのか
- 顧客教育によって顧客が得られるメリット
- 顧客教育によってSaaS提供企業が得られるメリット
- 顧客教育を仕組み化するために必要な考え方
- SaaSの解約防止を支援する顧客教育向けLMS「WisdomBase」
- まとめ
SaaSのチャーン(解約)とは?基本的な考え方

SaaSの解約防止を考えるうえで、まず押さえておきたいのが「チャーン(churn)」の考え方です。
チャーンとは、一定期間内に顧客がサービスを解約してしまうこと、またはその割合を指します。サブスクリプションモデルでは、チャーン率がそのまま事業の成長性や安定性に直結するため、非常に重要な指標とされています。
チャーン率とは何か
チャーン率は、一般的に「一定期間内に解約した顧客数 ÷ 期間開始時点の顧客数」で算出されます。
SaaSでは主に、顧客数ベースで解約を捉える「ロゴチャーン」と、売上ベースで解約影響を測る「レベニューチャーン」が用いられます。
顧客数が減っていなくても、利用規模の縮小によって売上が下がるケースもあるため、どの指標でチャーンを捉えるかを明確にしておくことが重要です。
なぜSaaSでは解約が起きやすいのか
SaaSは導入のハードルが低い一方で、「使い続ける理由」が弱いと簡単に解約されてしまう特性があります。物理的な製品と違い、価値が目に見えにくく、利用しなければ効果を実感できません。
特に導入初期に価値を感じられない場合や、使い方が分からない状態が続くと、「今は使っていないから解約しよう」という判断が下されやすくなります。この“価値実感までの壁”をどう越えるかが、SaaSの解約防止における大きな課題です。
SaaSで解約(チャーン)が発生する主な原因
SaaSの解約理由は企業や業界によって異なるものの、多くのケースで共通するパターンがあります。解約防止を考える際は、まず「なぜ顧客が離れてしまうのか」を構造的に理解することが重要です。
ここでは、SaaSで特に多く見られる代表的な解約原因を整理します。
製品の使い方が分からず価値を実感できない
最も多い解約理由の一つが、「使い方が分からない」「十分に活用できていない」という状態です。
機能自体は顧客の課題を解決できるものであっても、操作方法や活用イメージが伝わっていなければ、顧客は価値を感じられません。その結果、「期待していた効果が出ないサービス」と判断され、解約につながってしまいます。
想定していた利用方法と合わなかった
営業段階で描いていた利用イメージと、実際の運用がかみ合わないことも解約の要因になります。
自社の業務フローにどう組み込めばよいか分からない、思っていた使い方が実現できないといったズレが解消されないまま時間が経つと、「自社には合わなかった」という結論に至りやすくなります。
担当者の退職・異動による運用停止
SaaSの利用が特定の担当者に依存している場合、その人が退職・異動すると運用が止まってしまうことがあります。
引き継ぎが十分に行われず、新しい担当者が使い方を理解できないまま放置されると、サービスの利用頻度が下がり、結果的に解約につながるケースも少なくありません。
競合サービスへの乗り換え
価格や機能面で競合サービスの方が魅力的に見え、乗り換えが検討されることもあります。ただし、その背景には「現在のサービスの価値を十分に引き出せていない」という問題が隠れている場合も多いです。
自社サービスでできることを正しく理解していれば、防げた解約だったというケースも珍しくありません。
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SaaSの解約防止に有効な代表的な施策

SaaSの解約防止に取り組む際は、単一の施策に頼るのではなく、複数の観点から対策を講じることが重要です。
解約はさまざまな要因が重なって発生するため、顧客の状態に応じたアプローチを組み合わせていく必要があります。ここでは、多くのSaaS企業で実践されている代表的な解約防止施策を紹介します。
解約兆候を検知する仕組みづくり
解約を未然に防ぐためには、顧客が離脱しそうなサインを早期に把握することが欠かせません。
ログイン頻度の低下や特定機能の未利用、問い合わせ内容の変化など、日々の利用データから解約兆候を読み取ることで、適切なタイミングでフォローが可能になります。こうした兆候を可視化する仕組みを整えることが、解約防止の第一歩です。
カスタマーサクセス体制の強化
顧客の状況を把握し、適切な支援を行うためには、カスタマーサクセス(CS)体制の整備が欠かせません。
顧客ごとに目指すゴールや利用フェーズを整理し、対応方針を標準化することで、属人的になりがちな対応を防げます。また、CS担当者が自信を持って提案できるよう、プロダクト理解や成功事例の共有も重要です。
カスタマージャーニーの最適化
顧客は導入前、導入直後、運用フェーズと段階的に体験を積み重ねていきます。
それぞれのフェーズで「何につまずきやすいのか」「どのタイミングで支援が必要か」を整理し、顧客体験を設計し直すことで、利用定着を促しやすくなります。特に導入初期の体験は、その後の継続利用に大きく影響します。
競合との差別化・価値訴求
競合サービスと比較される場面では、単なる機能や価格だけでなく、「自社サービスを使うことでどのような成果が得られるのか」を明確に伝えることが重要です。
顧客が自社サービスの強みや活用価値を理解できていない場合、乗り換えを検討するきっかけになってしまいます。
顧客教育(カスタマートレーニング)の実施
これらの施策を横断的に支えるのが、顧客教育(カスタマートレーニング)です。
顧客がサービスの使い方や活用方法を正しく理解し、自ら成果を出せる状態をつくることで、解約リスクは大きく下がります。顧客教育は、解約防止施策の中でも再現性が高く、継続的な効果が期待できるアプローチといえるでしょう。
顧客教育(カスタマートレーニング)とは?

顧客教育(カスタマートレーニング)とは、顧客がSaaSを正しく理解し、継続的に価値を得られる状態をつくるための取り組みです。単に操作方法を説明するだけでなく、業務への活用方法や成果につなげるための考え方までを含めて支援する点が特徴です。
顧客教育の定義と目的
顧客教育の目的は、顧客を「使っている状態」から「使いこなして成果を出している状態」へ導くことにあります。
機能説明に終始するのではなく、どのような課題に対して、どの機能をどう使えばよいのかを理解してもらうことで、サービスの価値を最大化します。その結果、顧客満足度の向上や解約防止につながります。
オンボーディングとの違い
オンボーディングは、導入直後の立ち上げ支援を指すことが一般的です。一方、顧客教育はオンボーディング後も継続して行われる点が大きな違いです。
新機能の追加や利用フェーズの変化に応じて学び続けられる環境を提供することで、長期的な利用定着を支えます。
顧客教育が必要となるタイミング
顧客教育は、導入直後の顧客だけが対象ではありません。
導入前の検討段階、オンボーディング期間、運用が定着した後の活用レベル向上、新しい担当者への引き継ぎなど、あらゆるタイミングで必要とされます。顧客との関係性が続く限り、顧客教育は解約防止に効果を発揮し続けます。
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なぜ顧客教育がSaaS解約防止に効果的なのか

数ある解約防止施策の中でも、顧客教育は特に効果が高いとされています。その理由は、SaaSの解約原因の多くが「プロダクトの欠陥」ではなく、「顧客が価値を十分に引き出せていない状態」に起因しているためです。
顧客教育は、この根本課題に直接アプローチできる施策といえます。
多くの解約理由は「機能不足」ではなく「理解不足」
解約理由として「使いづらい」「期待した効果が出なかった」と挙げられる場合でも、実際には機能そのものが不足しているケースは多くありません。
本来は解決できる課題であっても、使い方や活用方法が分からなければ、顧客は価値を実感できません。顧客教育によって理解のギャップを埋めることで、「使えないサービス」という誤解を防ぐことができます。
価値実感までの時間(Time to Value)を短縮できる
SaaSでは、導入から価値を実感するまでの時間が長くなるほど、解約リスクが高まります。顧客教育を通じて、初期段階で必要な操作や成功体験を提示できれば、顧客は「使えば効果が出る」という感覚を早期に得られます。
結果として、利用定着が進み、解約を検討する前に成果を感じてもらいやすくなります。
属人化を防ぎ、利用定着を促進できる
顧客教育が体系化されていないと、特定の担当者だけがサービスを理解している状態になりがちです。
教育コンテンツが整備されていれば、新しい担当者や別部署のメンバーも同じ水準で学習でき、利用が継続しやすくなります。これは、担当者の退職や異動をきっかけとした解約を防ぐうえでも大きな効果があります。
顧客教育によって顧客が得られるメリット

顧客教育を通じて、顧客は単にサービスの使い方を学ぶだけでなく、SaaSを活用して成果を出すための知識や考え方を身につけることができます。これは解約防止だけでなく、顧客満足度の向上にも直結します。
導入効果を早期に実感できる
顧客教育によって、必要な操作や基本的な活用方法を短期間で理解できるようになります。
その結果、「何ができるサービスなのか」「自社の業務でどう役立つのか」を早い段階で実感でき、導入直後の不安や迷いを軽減できます。価値を感じるまでの時間が短くなるほど、解約を検討する可能性も低くなります。
自走できる状態をつくれる
体系化された教育コンテンツがあれば、顧客は分からないことがあった際に自分で学び、解決できるようになります。
サポートに頼らずとも活用を進められる状態は、日常的な利用を促し、サービスを「業務に欠かせない存在」として定着させることにつながります。
社内展開・活用レベルの向上につながる
顧客教育が整備されていると、担当者が変わった場合や他部署へ展開する際にも、同じ教育内容を共有できます。
これにより、特定の担当者に依存しない運用が可能になり、組織全体でサービスを活用しやすくなります。結果として、利用範囲が広がり、解約リスクの低減にもつながります。
顧客教育によってSaaS提供企業が得られるメリット
顧客教育は、顧客側だけでなく、SaaSを提供する企業にとっても多くのメリットをもたらします。解約防止を目的として始めた取り組みが、結果的に事業成長を後押しするケースも少なくありません。
解約率(チャーン率)の改善につながる
顧客がサービスの価値を理解し、成果を実感できるようになると、解約を検討する理由が減ります。
顧客教育によって利用定着が進めば、自然とチャーン率は低下し、安定した収益基盤を築きやすくなります。特に長期契約や継続利用を前提とするSaaSでは、解約率の改善がそのままLTV向上につながります。
サポート・問い合わせ工数を削減できる
操作方法や基本的な活用方法を教育コンテンツとして整理しておくことで、同じような問い合わせを減らすことができます。
CSやサポート担当者の対応工数が削減されれば、より付加価値の高い支援や提案に時間を割けるようになります。
アップセル・クロスセルを促進できる
顧客教育を通じて、サービスの活用範囲や新しい使い方を知ってもらうことで、上位プランや追加機能への関心も高まりやすくなります。
顧客が成果を実感している状態で提案するアップセルやクロスセルは、受け入れられやすく、売上拡大にもつながります。
顧客教育を仕組み化するために必要な考え方

顧客教育を解約防止につなげるためには、個別対応や一時的な施策で終わらせず、継続的に運用できる仕組みとして設計することが重要です。ここでは、顧客教育を安定して回すために押さえておきたい考え方を整理します。
属人的な顧客教育には限界がある
CS担当者が個別に説明したり、都度資料を送付したりする方法では、対応品質にばらつきが出やすく、スケールもしません。
担当者の異動や退職によってノウハウが失われるリスクもあります。解約防止を目的とするのであれば、誰が対応しても一定の学習体験を提供できる状態を目指す必要があります。
顧客向け学習環境を整備するメリット
顧客がいつでも必要な情報にアクセスできる学習環境を用意することで、利用定着を促しやすくなります。
動画やテキスト、ステップ形式のコンテンツを通じて段階的に学べる仕組みがあれば、顧客は自分のペースで理解を深められます。これは、サポート負荷の軽減と顧客満足度向上の両立にもつながります。
顧客教育に必要な主な機能・要件
顧客教育を仕組みとして運用するには、コンテンツ管理、受講状況の把握、顧客属性ごとの出し分けといった機能が欠かせません。
どの顧客がどこまで学習しているかを把握できれば、適切なタイミングでフォローや追加提案が可能になり、解約防止施策としても効果を発揮します。
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SaaSの解約防止を支援する顧客教育向けLMS「WisdomBase」
顧客教育を解約防止につなげるには、継続的に運用できる仕組みが欠かせません。
WisdomBase は、顧客向けトレーニングを効率的に提供し、SaaSの利用定着を支援する国産LMSです。
WisdomBaseが顧客教育に向いている理由
教育コンテンツの一元管理や、顧客ごとの受講状況の可視化が可能なため、つまずきやすいポイントを把握しやすくなります。
また、顧客属性に応じたコンテンツ出し分けにも対応でき、属人的になりがちな顧客教育を仕組み化できます。
以下のようなSaaS企業におすすめです。
- 導入後の利用定着が進まず、解約が課題になっている
- CS・サポート工数を削減したい
- 顧客教育を継続的に運用したい
ご関心がございましたらお気軽にお問い合わせください。
まとめ
SaaSの解約防止には、機能追加や価格調整だけでなく、顧客がサービスの価値を正しく理解し、成果を実感できる状態をつくることが重要です。多くの解約は、機能不足ではなく「使いこなせていない」ことが原因で起きています。
顧客教育を通じて利用定着を促進できれば、解約率の改善だけでなく、顧客満足度やLTVの向上にもつながります。解約防止を一時的な施策で終わらせず、顧客が成功し続ける仕組みとして捉えることが、SaaSビジネスの成長を支えるポイントです。
WisdomBaseを活用した顧客教育の進め方や、解約防止につながる活用例をまとめた資料をご用意しています。「自社に合うか分からない」「どのように運用すればよいか相談したい」という場合も、お気軽にお問い合わせください。

