近年、新しい企業人事のスタイルとして戦略人事に注目が集まっています。
旧来より企業の経営資源として「ヒト・モノ・カネ」が挙げられてきましたが、戦略人事はこの中の「ヒト」にフォーカスしたもの。
1990年代にアメリカの経済学者であるデイヴ・ウルリッチが提唱し、世界的有名企業の多くが導入している人事施策のスタイルです。
日本では少子高齢化の進行に伴って、労働人口も減少傾向にあり、政府の試算では、2040年までに2017年と比較して約1300万人減るというデータも出ています。
こういった社会背景から、いかに社員一人ひとりのパフォーマンスを上げていくか、いかに優秀な人材を採用し定着してもらえるかという視点で、経営資源の中でも「ヒト」に関する事柄の重要性が高まっている日本企業にこそ、導入が必要だとも言われる戦略人事。
今回は、これから日本でも主流となっていくであろう戦略人事について徹底解説します!
- 戦略人事とは何か
- 戦略人事の4つの役割
- 戦略人事を実践した企業の事例
- 戦略人事導入に重要なポイント
- WisdomBase(ウィズダムベース)なら、戦略人事に活かせるオンライン研修システムをカスタマイズ構築できます
戦略人事とは何か
戦略人事とは、戦略的な人的資源の管理を意味します。具体的には、自社の経営計画や経営目標の達成を目的とし、そのために人材や組織の活用の最大化を目指す人事施策を指します。
従来の人事の仕事は、人事労務書類の作成や給与計算などのオペレーション業務が中心で、安定的で正確な管理業務が求められてきました。
戦略人事では、そのようなルーティンワークよりも、経営戦略に沿った人事施策の検討と実行に注力します。そのため、柔軟な発想や実行力が求められると言えます。
戦略人事の4つの役割
戦略人事を遂行するためには、以下の4つの役割が必要とされています。
HRBP(HRビジネスパートナー)
企業戦略・事業戦略に基づいて、人事戦略を構築するための経営・事業のパートナーとしての人事。これまでの裏方的な業務と違い、経営者のパートナーとして積極的に経営に参加していくべきだという考えから作られた役割です。
事業戦略を理解した上で人事戦略を考案する必要があるため、人事の知識はもちろんのこと、経営的知識も身に付けることが求められます。また、現場に即した戦略・施策を立案するため他部署とも積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。
CoE(センター・オブ・エクセレンス)
エクセレンスとは、優秀・卓越という意味の英単語。つまり、戦略人事におけるCoEとは、優秀な人事担当がプロフェッショナルとして経営層や現場のサポートをすることが期待されています。
現場でのニーズの聞き取りや、社内アンケートなどを通じて、潜在的な課題を見つけ出し、給与体系などの制度設計や見直し、研修プログラムの考案などを行います。
OD&TD(組織開発&人材開発)
経営戦略・経営目標の達成を阻害している問題の解決や、組織や一人ひとりの人材をより良いものとし、目標達成に近付くための役割も存在します。
大きな成果を得るためには、組織と個人両方の成長のために、バランスよく施策に取り組む必要があります。
OPs(オペレーションズ)
従来の人事で主な業務とされていたオペレーション業務を担う役割も、やはり欠かせません。給与計算や勤怠管理などの日常業務のほか、CoEで考案された施策の運用なども行います。
戦略人事を行う場合でも、給与計算や勤怠管理などの日常業務は基礎となってきますので、正確に効率よく行える能力も必要になります。
戦略人事を実践した企業の事例
ここからは実際に戦略人事を実践した日本企業の事例をご紹介します。
日清食品
日清食品では、2014年のCHRO(最高人事責任者)の就任以後、
・企業として向かうべき方向性
・企業戦略に沿った必要な人材の定義づけ
・必要と考えられる人材の育成プログラム
とった課題を掲げ、戦略人事に取り組み始めました。
具体的な施策としては「グローバルSAMURAIアカデミー」という企業内大学を設立し、次世代を担うグローバル経営人材の育成を行っています。
年代別に分かれたコースが用意されており、語学力・論理的思考力・マネジメントスキルなどを学ぶことができます。
このような人材育成施策の結果、グローバル経営人材は200名に増加したとのことです。
カヤック
カヤックでは、「ぜんいん人事部計画」として社員全員が人事部の肩書を背負い仕事をしています。
社員一人ひとりが「より面白く働ける仕組み・環境を考える」ために導入したそうです。現場の意見を反映した施策が打てるというメリットもあり、会社のことを”自分ゴト”として考える社員が増えることも期待されています。
この「ぜんいん人事部計画」のもと、社内でこの人と働きたい!と思った際に特別選考に招待できる「ファストパス制度」や、社員の相互評価で月給を決める「月給ランキング」などの制度を作っています。
このような取り組みの結果、社員が会社のことを”自分ゴト”と捉える意識の醸成ができるようになった一方、社員全員が人事部となったことで、SNSでの発信などを通じて自社に合った人材からの応募を集めやすくなり、採用コストの25%削減に繋がりました。
戦略人事導入に重要なポイント
最後に、自社で導入する際に気を付けたい重要ポイントについてお伝えします。
経営戦略を明確化する
経営戦略が明確になっていないと、それに沿った戦略・施策を考えることができません。土台となる経営戦略がブレてしまうと、もちろん人事領域の戦略もブレてしまい、導入したもののうまくいかなかった、という結果になりかねません。
経営戦略がぼやけている場合は、まず経営戦略を明確化し、会社が目指す方向性をはっきりさせることはもちろん、全社的な目標設定に沿った戦略人事の成功の目標基準の策定も重要になります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる昨今、戦略人事によって人材育成の成果をどのように可視化できるかは、全社的なデータ活用にもポイントとなる一方で、目標を明確化することで、全社一丸となって戦略人事を推し進めることにも繋がるでしょう。
人事マネージャーだけでなく、全員が経営的な視点を持つ
戦略人事には、まず人事マネジャーが経営者と同じ目線を持つことは必要不可欠です。人事戦略と経営戦略をバラバラにしないためにも、経営戦略を理解し人事戦略に落とし込めることが重要となります。
そして、人事マネージャーだけではなく、人事部全体・人事担当一人一人が経営的な視点を持つことも重要です。目の前の日常業務に追われるだけでなく、会社全体の流れを理解し、何を行えば経営戦略の達成に繋がるのかを常に意識する習慣づけが求められます。
人事部と他部署の連携を強める
経営戦略に沿った人事施策を打つためには、各部署の状況の理解が欠かせません。人事担当一人ひとりが、広い視野を持って会社の動きや問題を把握するよう努める必要があります。
他部署のミーティングに同席させてもらう、定期的にランチ会をするなどの取り組みを通して、実際の状況を知れる環境、実情を話してもらえる関係性を作ることは、戦略人事の第一歩とも言えるでしょう。
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